オノゴロ島が一段上の世界に行き、
この世界(我々の世界)から無くなってしまったー・・・
巣実於部屋(すみおべや)にて、三柱が思いに耽っていた。
もう、父上と母上のいた、生み出したあの島は
この世にはいない ―
無い、ではなく「いない」という対生物に対する用語を使う時点で、
三柱にとって、あの島は「生き物」と同じなのであった。
改めて紹介するが、
巣実於部屋(すみおべや)とは、アマテラス、ツクヨミ、スサノオしか入れない、
三柱の話し合いの部屋で、とても重要なことを静かに深く考察、論議したりする部屋である。
「 ― そういう訳で、お父様とお母様の残した島の、大きな樹から御子(みこ)を生みました。
それで、先日葦原中国に送りました」
アマテラスは今までのいきさつを話した。弟たち二柱に。
大きな樹から筆のようなものを貰い、そして統治者たる御子を創った。
神ではなく、人間として。
なので、最初から成長している姿ではなく、人間として赤ん坊の姿で創り出した。
葦原中国の存在として。。
現在、オノゴロ島は発見されていない。
もうこの世に無いからだ ― 。
今、三柱は巣実於部屋で、葦原中国に送った御子 ― イワレビコについてああでもないこうでもないと
話し合っていた。
ツクヨミは静かに言った。
「・・・実子、というのは少し ― 。
近すぎるかもしれないですね・・・」
アマテラスとイワレビコとの関係をどう設定するか、ということだ。
―
大国主から葦原中国を譲られ、高天原の代表者であるアマテラスの血縁者を
それからのことを話し合っている。
アマテラスは言う。
「設定を、これから歴史になっていく設定を、決めないとね ― 」
今回の巣実於部屋は明るい洞窟のような形になっている。
白くて細い棒から、灯りがポウッと出ている。
火ではなく、光が出ているのだが。
アマテラスは華やかながら作りが簡素で品のある巫女服のようなものを着て、
ツクヨミは袖の長い、やたら布の長い色の薄い高貴な宮廷服(古代中国のような)を着ており、
スサノオは軽装・・・動物の皮で出来たものであろうか、皮の内側にふわふわの布を縫いこんだような
ベストと、丈の短い腰布をまとっているような服装である。
アマテラスとツクヨミは天の、高天原の品を表しているような雰囲気で、
スサノオは葦原中国の自由さを表しているような雰囲気。
ああでもない、こうでもない、と三柱はしばらく話し合った。
天から遣わす存在として、
(どういうことだろう・・・(汗))
三代下、いや四代下、いや五代下、三柱は距離を検討した。
スサノオが五代下が如何に良い距離感かを語り、
五代下、という設定が決まった。
「まず、私の長男、オシホミミから始まり、
ー今、
アマテラス ― オシホミミ ― (空席) ― (空席)ーウガヤフキーイワレビコ・・・となるわね」
スサノオは、太陽神である姉上に、山の神の血縁と、海の神の血縁を混ぜて、万能の存在、という設定に
してみてはどうだろう、と提案した。
まず、アマテラスがオシホミミという長男を創り、
そのオシホミミが繁栄の神を創った、、
「その時に天から降りる、って設定にしよう」とスサノオが口を挟む。
さらさらっ、とツクヨミが文字を走らせる。
(系図を書いている)
「・・・その男神が山の神の娘と結婚し、生まれた男子が、
海の神の娘と結ばれ、・・・ウガヤフキが誕生。
ウガヤフキの子が、イワレビコ」
ツクヨミが系図を持った。
「これでいいですね」
左右にいるアマテラスとスサノオが喜んだ。
ツクヨミは系図を再度見る。
「さてこれを・・・」
それを左からアマテラスが見て言う。
「どう伝えるかね、今度は・・・」
アマテラスが突然立ち上がった。
「絵本なんてどうかしら」