癒し?NO
アイユー。
誰も知らぬ者はいない、鬼神の剣士になった。
黒騎士と呼ばれていたが、着ている鎧は白かった。
思い出したくない思い出。
ひたすら血だらけでモンスターと呼ばれる『修練値』を上げてくれる敵をやつける。
普通は体が壊れるだろう。
筋力は有り得ないくらい付き、骨は鉄筋以上に硬くなった。
肉は裂け、骨は砕け、血が吹き出る。
精神だけがまるでマントル(って有るの?)のように燃え盛っていた。
精神で、肉体を治す。
そんな有りもしない奇跡、偶然、それでひたすら剣を振るった。
細胞が活性化し、全てを斬ろうとDNAに書き込まれてしまったのだろう。
・・・
ユウナ「でもこれゲームの世界でしょ。怪我とかしたらどうするんだろ。・・・三次元てのがあやしいよね
やめなよ。鍛えるとかそういうんじゃないし」
城の奥深くに厳重に封印されていた、謎の仮想空間で修行していたことも・・・。
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「そうですわ」
エアリー「ウィザードのご勉学をなさる時なのでは」
(ウィザードは元々のアイユーの志望冒険職である)
ロンがてくてく歩いてきた。
「まず休も?
いっぱい色々やったからね」
エアリーとロンが 顔を見合わせてニコッと微笑んだ。
アイユー「・・・そうね」
・・・
すぅ
夜。
眠っているアイユーの横にちょこん、と座ってロンが心の中で言った。
ロン「(アイユーちゃんお疲れ様)」
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失敗することもあるが、
アイユーには「ヤオ家」に稀(まれ)に出る特殊能力の血が眠っており、
その術が使える。
「ま~まだまだだから気楽に行くぅ」
のんびり言うアイユー。
1、癒しの術がとても強く聖職者以上のヒールを使える
2、癒しの術がとても強く、むしろ生物の細胞自体を壊してしまう
これらだ。
1、は天界に上げられた後の「癒々の術」へと昇華してゆく。
すぅ
長年の疲れから、ずーっと寝っぱなしになるアイユー。
ロン「(ゆっくり休んでね)」
ロンは常に見守っていた。
物理攻撃の修行は、結果的に「力」というより「精神」を鍛えた。
・・・
大きな癒しを施すには、まず暴力的な物理攻撃と魔法攻撃の強さというものを身に付け、
強さを制覇した上で、その力を「癒し」へと変換させる、、ということをしなければならない。
癒しだけなら弱い癒ししか施せない。
本当の大いなる癒しは「力」そのものをまず制覇しないといけないのである。
次はウィザードとしての修行、最後にプリーストになりヒールの鍛錬。
次のやることのために、ひたすら英気を養うアイユー。
外の風は桜の香りをまとって吹いている。
ガタッ
カタカタッ
カタカタカタッ
風がいたずらに、アイユーの寝ているすぐ傍の窓を揺らす。
まだ、癒しの術は無理かもしれないケド、応援してるからね!
と風が応援しているようであった。
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