たくさんの花が、それぞれ一種類ごとに でっかく広がっている。
ラベンダー畑、ローズマリー畑、コスモス畑、ヒマワリ畑、ユリ畑、、
など、色々だ。
下界のように、虫駆除の薬を振り掛けるだとか、雑草を引っこ抜くだとかはする必要はなく、
花たちが勝手に自分の面倒を見る。
過去「南極の花」で花たちが夜に寝息を立てていたのは「生きていたから」である。
つまり天界の花は人間と少し似ているので、人間がセッセと世話しなくてもいい。
少し曇ってるな~
喬一は空の様子を見て、うーむと思った。
まぁ涼しくていいかも
そう思って、ある畑に 春花(黒シェパードの雲)をびゅーんと走らせた。
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『やほー』
おおっ
喬一さんからミョンホンだ。
『やほー!』
元気良く美織は答えた。
『贈り物が!』
え?
『贈り物?え、なになに。何だろう!』
ワクワクのあまり子供っぽくなってしまう。
『今何処にいますか!』
『今はコスモス畑だよ~
声を聴いてるの~』
花篠娘々の勤めとして、花々の苦情の声、産声、枯れ行く声を聴いて
それを手助けしなければいけない というものがある。
天界の気が遠くなるたくさんの花々の声をいっこいっこせっせと聴くのだ。
(もちろん、他にもやることがある)
『勤め中か!』
『大丈夫よ。一息つこうと思ってたとこだから~』
うーん と悩んだ喬一だったが
『お勤めが終わったらってことで』
と言った。
あら、残念 と思いながら
『分かったー。その時はすぐに連絡するね!』
と応答する美織。
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緑の無地のソファーに座りながら。
(・・・)
これは「茉莉花(ジャスミン)」?
美織の両手に握られているのは、ブーケのような 小ぶりの茉莉花の花束である。
わ~いい香りv
美織は感激して「そこまで近付けるかよ!」と言うほど花を鼻にくっつけて
す~~っと香りを嗅いだ
(多分これで香りの成分がほぼ失われた!)
中国茶が好きで、、
普洱茶(プアール茶)とか烏龍茶(ウーロン茶)とか茉莉花茶(ジャスミン茶)とか
好きなのね。
茉莉花の花を見るのは初めて、、
しばし茉莉花に見とれていた美織であったが、、
喬一が口を開いた。
「その花言葉知っていますか」
美織「花言葉?」
・・・
花篠娘々(花に関わる女仙)のはずなのに 全然忘れてる。
な、何だっけ。
「どんなの?」
『 清純無垢 』
喬一はさらっと言った。
少しだけ沈黙が漂う。
清純、、無垢、、
美織「(パスタ スパゲティみたい・・・)」
「(或いはマンガ コミックみたいな)」
「(でも一番のメジャーはスター 星よね)」
違う違う!
ん~。おっとっと、、
美織「清純無垢か、、素敵ですね!」
喬一「うむ」
いつまでもいつまでも
どんなことがあっても 清純無垢のままの君でいて欲しい的な思いを
美織に伝えたかった。
(意外とロマンチスト)
でも喬一さん
茉莉花(ジャスミン)にはもうひとつ意味があるのよ
美織が少し笑って言った。
喬一「む?」
何だろうと思う喬一。
何か面白いことでも言うのかな
そう思っていたら、
「官能的って意味もあるの」
清純無垢、の真逆よね
ふたつ意味があって、それぞれが真逆って
「青と赤」
「お米とパン」
「西洋と東洋」
みたいで素敵じゃない?
だからそういうの、覚えてたの
喬一「知ってたのか!」
茉莉花の花言葉を
驚く喬一。
うん
「カマトトぶって御免ね」
喬一はもちろん「清純無垢」の意味しか知らなかった。
やられた! と思っていると
つまり喬一さんの 潜在意識では
『清らかな私』と『色っぽい私』と
「両方欲しい!」 という気持ちが眠っているってことね
と美織。
喬一はそのまま「僕は用事があるのでこれで!」と逃げたかったが
ここは喬一の自宅である。
いつもは本当にあらかじめ用事を作っておいて、(まじで?)
それで「用事があるので!」と逃げるのだが
逃げられないコマンドしかない。
喬一「清純無垢だけがいいです!」
そう言うのが精一杯の彼。
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