喬一「僕はいつだってかっこいいですよ」
美織「そういう意味じゃなくてぇ」
喬一「どら焼きまだですか」
美織「あらやだ!」
美織は口を両手で覆った。
美織「忘れてたよー!
御免 すぐー」
う~~ん、と渋い顔をする喬一。
美織「あっ、思ったンだけど、
モロクのやつとか、王室のやつとか、
色んな街のどら焼きを虹色みたくするとステ・・・」
喬一「一種類でいいですよ」
美織「んもう!」
は~あ、という感じで肩をすくめる美織。
(美織は虹色が大好き)
喬一「王室ご用達!」
美織「は~い。・・・半分くらい少ーしずつ食べちゃっていい?」
喬一「だめです!」
美織「やだ!」
この前あんな雷みたいな喧嘩してたのに・・・
エメラインはたらりとしつつも、微笑ましく見ていた。
そういえば。
エメライン「あの、、天界の方が、下界の食べ物なんて、美味しく食べられるのですか?」
いつも蟠桃(ばんとう)なる崑崙山特産?の天人専用の桃を美味しく食べているふたりが、
下界の食べ物なんて美味しいのだろうか。
喬一「どら焼きは美味しいです」
美織「天界のものは喬一さん全部食べてるから、、
今更って感じなんだと思う」
喬一「全部じゃないような」
美織「でもほぼ食べてない?」
どういう種類のものだろう。
エメラインは天界の食べ物に興味を持った。
美織「私もねー、下界の、「ルナティックステーキ」すごく興味あるのよねー
あれ一度食べてみたいv」
エメライン「あれは美味しいですよ!」
美織「最近?でもないけど、結構最近出来た料理なんだよね
みんなアレ食べてるよねー」
喬一「ライナスが泣いちゃいますよ!(※ライナスはうさぎ年)」
美織「泣かしとく」
ライナスってあのヤシの樹みたいな大きい人か・・・
ライナスはその長身(197cm)で ミッドガルド大陸内でも結構な有名人であった。
美織「そーだ」
急に真面目な顔をして、美織がエメラインの傍に来た。
「ジョセフさん、心配してますよ」
う"っ
エメラインはぎくりとした。
美織「まぁ、、器のでかい人だから、「まぁ俺は待ってるよ」「君の好きにしたらいい」
って思ってるンだろうけど」
言葉が痛い。
「立場的に、、やっぱりどうしていいか分からないし、
気持ちは分かるけど、
自分はこう! っていう 強い意志は持たなきゃ」
それが例えくじかれそうになっても、
砕かれそうになっても
「それでも、強い意志を持つのよ
やりすぎるとやばいけどね」
エメラインはそもそも「無理をしすぎて」療養の身になっているアークビショップであった。
(※アークビショップ=聖職者の最上位職)
美織は少し頭を掻いて
美織「やーね、すでに無理している人を追い詰めて。
これだから私は・・・」
エメライン「いえ」
そんなことないです。
エメラインは思った。
本当にそうだろう。
確かに難しい。立場的に。
でも、グッとした意志でも持たないと、状況は変わらない。
喬一「桃でも食べますか」
空気を読んだかのように、喬一が言う。
ぎょっとした顔をして美織が慌てる。
美織「エメラインさん大丈夫かしら。蟠桃なんて食べて」
喬一「こんなこともあろうかと、普通の桃を取っておきました」
何がこんなこともあろうかと なのだろうか。
きっと何かあるだろうな、と「桃」を せっせと摘んでいた喬一を想像すると面白い。
あむあむあむ
冷たくて美味しい。
今はまだ分からないけれど、
どうなるか分からないけれど、
ふたりの優しさに、心が温かくなるエメラインだった。
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