今まで、この言葉はいい言葉だと思っていた。
何かを認められるとか、褒め言葉とか。
エメラインは顔を青くした。
怖い!
どうしよう
何故こんなことになるの?
心がどうして逆らうの?
遠くでピアノの音が聴こえる。
レオナルドだ。
どうしよう。
エメラインは青い顔をしながらひたすら廊下に立ち尽くしていた。
どのくらい長い時間そうしていただろう。
やっと、、まるで夢遊病者のようにすたすたエメラインは前にふらふらと進んでいった。
「・・・ん?」
レオナルドが振り向いた。
エメラインがやはり青い顔をしながら、ピアノの部屋のドアの凹みの部分によっかかっていた。
「どうかしたのか」
レオナルドが聞く。
「あ、あの」
言いにくそうなエメライン。
「ん?」
普通ではないエメラインの様子に、ピアノから離れ、そちらに行く。
「どうした、何かあったのか」
「あ、赤ちゃんが・・・」
驚いて、「え・・・」と言うレオナルド。
わっ 分っかんない!
声が響き渡る。
エメライン「何故??
何故??
何故愛してもいないのに出来るの?
どうしてっ・・・」
外は雨が降っていた。
祝福しないように
雲が厚く空を覆っている。
「・・・・・・」
口を開けたまま、呆けたように黙っていたレオナルドだったが、、
「・・・そうか・・・」
と下を向いた。
エメラインはきっ!と睨んだ。
エメライン「この子は、、不幸な子だわ・・・
全く愛し合ってもいない夫婦の間に産まれて、、
なんて可哀想な子!」
エメラインは目をつぶった。
唇をぎゅっと結び、エメラインの言葉を受け止めて、
それに耐えながら、、
ん?とレオナルドは気付いた。
レオナルド「いや待て。
な、何故だ?
何故・・・愛してもいないのにそんなことがある。
ばあやから聞いた話では、そのようなことはないはず・・・」
ええぇ?
という顔で「信じられない」という顔をしているレオナルド。
「・・・・・・」
エメラインはうろたえた。
私だってそうよ。
私だってそう思ってた!
意味分からない・・・
ザー
ピカピカッ
小さな雷も鳴っているらしい。
この事象を表しているように、、天候も騒いでいる気がする。
エメライン「分っかんないわよ!分かんない分かんない!
嗚呼嫌! 絶対! 絶対絶対産みたくない!」
ムッとした顔、、同時に哀しそうな顔をするレオナルド。
レオナルド「そうか・・・君はそんなに私の子を産みたくないのだな・・・」
エメライン「だって、、 私は」
勝手にさらわれて、
勝手に監禁されて
勝手に結婚させられて
挙句 勝手に身ごもらされた
エメライン「(私に非はない。・・・どうして、、それでこの人のことを想って、
それで
「子供産みたい」だなんて諦めて思えるの。 有り得ないでしょ・・・」
くうぅぅぅっ! と悔しそうに頭を振る。
その様子を、レオナルドはひたすら哀しそうに見ていた。