思わず飲んでいたコーヒー(お酒は呑めない)を吹きそうになるワイアット。
ポリポリ頭を掻くライナス。
・・・
い
いつの間に、、
「(この人なら手が早いとは思っていたが・・・)」
まぁ計算してたんだけどな
・・・
ふたりの仲を思えばそれも有り得そう、とも思った。
名前は決めてんだ
くるっと後ろを振り返ってセイラを見る。
「モスリン」
ふたりはハモった。
も、モスリン?
思わず聞き返すワイアット。
「前にな、メイさんが あるゲームで キャラ名を「モスリン」にしててな。
それで「なんだよそれ」って 印象深く残ってんだ」
ライナスは 看護師のセイラと結婚するらしい。
しかもお腹には「モスリン」という名前が付けられる子供まで。
モスリン、というのは女の子っぽい名前である。
「女の子なんですか?」
モスリン、だし・・・
「知らん」
ライナスは興味なさそうだ。
それより双子だったらどうしようって
「そっちの方が大事だ!」
・・・
えーと
「調べないのですか?」
「調べたらつまんねーじゃねーか」
こういうの、真っ先に細かく、詳しく調べる人なんですけどねぇ
とセイラが笑う。
「確かに・・・」
ワイアットは「これが親父の貫禄?ってやつなのかな(細かいこと気にしない)」と思った。
モチリン、モスリン、にするか。
双子の場合の名前を考えているらしい
ライナスはとても神経質且つ適当なことはせずに完璧主義である。
(ビジネスの場で。あくまで)
そのライナスがここまでだら~ん(というか上手い表現が分からない)とするのは
セイラに対する圧倒的な信頼感があるからである。
何でも自分で調べる、何でも人に任せずに自分でやる、
そんなライナスが全面的に何でも信用、信頼しているのがセイラだった。
そしてセイラはその要求を全て 完璧にこなしてきた。
「そんなの無理!」と彼女が叫ぶような無理な、、無茶な要求さえ
彼女は結局こなし、ライナスはそれで何度も助けられてきた。
★1週間かかる薬剤を3時間で作って
★どこどこ(すっごい危険なモンスターがいっぱいいるダンジョン)に生えてる薬草を500種類取ってきて
★○○に関すること、△△に関すること、□□に関すること、プロンテラ、ジュノー両図書館に行って 今日中に完璧にレポートしてきて欲しい
★君の飼っているホムンクルスのひつじさん、お手とか伏せとか出来るようにして
出来れば曲芸とかさせてみて。出来たらだけどお盆にお茶乗せて運べるようにして
(※ホムンクルス=錬金術師系職が生み出す亜生物)
これらのことを全部完璧にこなす(ゴルゴの信頼してる人たちかと・・・)のだ。
セイラはそれが嫌だから、完璧にこなすのだ。
いや、「こなさねばならない」のだ。
ライナスは優等生で、なんでもそつなくこなす。
全てが水準以上で、
無理せずに高得点を叩き出し、
それをどの分野でも発揮、バランス良く立ち回る。
セイラは「1つ」しか見えずに後を全部「ガン無視」し、
やると決めたことは100点を取らないと気が済まない。
バランスが全く!ない1点集中完璧型である。
ライナスはそのセイラの「有り得ない集中力」を尊敬し、
且つ恐れていた。
(畏れていた、と言うべきか、、)
ディベートする時でもセイラは全力で完璧に議論するので
ライナスは泣いてしまうのだ(実際に泣く訳ではない)
そういう彼女の部分に・・・という訳である。
ちなみに一点集中型なだけで
他全てがという訳ではなく
むしろ「一点」以外のものは水準以下である。
本当に「一点集中型」なのだ。
・・・
ワイアットはズズーッとコーヒーを飲み干した。
あ
「入籍はもうなさったんですか?」
え、えーっ?!
セイラ「計算得意よねー」
・・・
「子供が出来たなこれ」と思ったその日にもう入籍したのだと言う。
ワイアット「(・・・これは理系的な頭の良さと 文系的な愛情深さの合体だ!)」
ワイアットは思った。
一番上の兄のアレクシス兄さんも頭良いし、ライナスさんもこうだし、
僕も頭良くなりたいなぁ
しかしワイアットは知らない。
愛情深いワイアットこそが、女性を幸せに出来るのだと。
女性が本当に愛するのは最終的にはワイアットのような男性であり
自分が最後には素敵な恋愛なり結婚が出来ることを。
ワイアットも最後にはただひとりの愛する女性を見つける。
そして
ただひとりの女性を見つけたライナスは
ずっとずっと、幸せそうに セイラを抱き寄せて座っていた。
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