その時もその前もその後も、エメラインの様子は全く変わらなかった。
いつも通りの、余裕のある笑みでいたエメライン。
いつの間にか、モスコビア(美しい礼拝堂と皇宮で彩られる街)の樹々たちがどんどんつた絡みとなって、エメラインの中に侵食してきた。
全てがエメラインを侵食し、支配した。
こんなはずはなかった!
エメラインは崩れた自分を憐れんだ。
この地は呪われているのではないか。
エメラインはモスコビアに来るたびに思う。
こんな風に侵食された自分なんてもういや!
投げ捨てたい!
何度そう思ったことか。
種をまいたわ
だって大丈夫だって思ったんですもの。
淡い色したふんわりした花が咲くって思っていたのですから。
ぐふっ
違う
何で。
花が咲かない。
花は咲かなかった!
棘だらけの、、痛い痛いツルが巻き付いて、、
私を、、?
殺そうと・・・?
違うのよ
私は、、淡いブルーとピンクの 素敵な花が咲くと思ってたの
嗚呼
赤い・・・
目をつぶる。
血よりも赤い薔薇・・・痛い痛い棘
禍々しい(まがまがしい)花。
そんなものが出来てしまうなんて!
私が全ての原因よ!!
私がいけない!
何てことしちゃったの!
私が全部悪い、、、
どうすればいいの・・・
もう、時間の砂時計は元には戻らない・・・
さようなら、、昔の私。
さようなら、、昔のあなた。
さようなら、、昔の、、雲の花のような空間。
モスコビアの樹々たちはいじわるそうにエコー付きでささやく。
「自業自得だよ」
分かってる!
分かってるけど、これから一体どうすればいいの?
つたたちはささやく。
逃げられないよ。
と。
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