干支・・・
今度、玄孫の「悠馬(ゆうま)」君にっ、子供が生まれるんだって!玄孫(やしゃご)=曾孫の子
悠悟「へぇ」
最近出た新しいタイプの「日本茶を全部混ぜたミックス日本茶」という日本茶を飲む悠悟。
新しいもの大好きなおじいちゃん、悠悟と、
新しい古い両方を大切にするおばあちゃん、彩織。
彩織「あ、玄孫の次って、、何?」
えっと、、
悠悟「玄孫(やしゃご)→来孫(きしゃご)→昆孫(こんそん)だから『来孫(きしゃご)』だな」
へぇ
パチパチッ(拍手)
「悠悟、相変わらず博識ね」
悠悟「メガ→ギガ→テラ→ペタ→エクサに似てる」
そうね
彩織「数の単位とか・・・順番の名前とか覚えておかなきゃいけないわね」
悠悟「俺たちは雲孫(昆孫の孫)が出来てもかくしゃくとしてなきゃな」
のんびりと言う悠悟。
彩織「当ったり前でしょっ」
両手の親指をピッ!と上げる彩織。
ざざ~ん ざざ~ん
何故か千葉の房総にいるふたり。
海を見つめる。
悠(ゆう)が生まれた時どうだった?
何となく聞く悠悟。
(こんなこと普段言わない)
あの頃もわざわざ彩織のわがままで千葉の房総にやってきたのだ。
海と山にかこまれたあの場所で生みたいと・・・
彩織「一時間半で生まれた、、不思議な子だったわね」
あまり泣かないし、夜泣きもしない。
おむつも1年で取れるわ、典型的な「手の掛からない子」であった。
「初め、悠悟の超能力のせいかと思ったわ」
悠悟は部屋をリゾート地にしたり宇宙空間にしたり、動物を出現させたりする不思議な力があった。
しかし悠悟は子供を信じている。
超能力を掛けることは「子供を頼りないと思っている」「信じていない」ということになる。
だから悠悟はそんなことは一切しなかった。
彩織「海と山に囲まれているっていう条件が良かったのね。
やっぱり、私の判断は間違ってなかったのよ。きっとね」
そうなのかなぁ・・・
と思う悠悟。
もう、あの悠が「ひい祖父ちゃん」である。
(そして悠悟と彩織は「ひぃひぃ祖父ちゃん祖母ちゃん」である)
呆けないのは毎日悠悟の超能力による刺激的な毎日を送っていたからであろう。
ねぇ悠悟
「プリンス・エドワード島に行かない?」
悠悟の超能力でいくらでも何処かの空間をプリンス・エドワード島に出来る。
作り物も作れるし、
実際の場所をその空間に持って来ることも出来る。
彩織「実際のとこに行くのよ!」
新婚の時みたいに。
新婚の時はまだ悠悟が超能力を隠していた時期である。
ふたりは新婚の地に『プリンス・エドワード島』を選んだ。
彩織『いやよっ!南の島がいいの!ダサそうじゃないそんなとこっ』
悠悟『プリンス・エドワード島に行こう』
ロボットのようにクールに言う悠悟にとうとう彩織が折れた。
・・・
そんな、想い出。
(微妙な・・・)
ぶわわっ
海からの風が激しい。
私たちの想い出の島なんだから。
老後の貯金はあるわ。
行かなくちゃ。
秋は絶好の季節である。(紅葉が美しい)
『私たちの想い出の島なんだから』
悠悟「ん。そうだったか?」
・・・
いつまでもこういう所に慣れない彩織。
ピシッとしていてふたりとも腰が曲がっていない。
かくしゃくとしていて、旅行だの何だの、へっちゃらであった。
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ここの樹なら、、今誰も来てないわねっ!
ねぇ。ここに干支忍者を参上させてよっ
彩織は頼み込む。
悠悟は理解した。
「(これがやりたかったのか)」
想い出の地で
大きな樹をポンポンッと叩いて、、
少し下がる。
ポンッ
服を着た干支忍者たちが樹を中心にドンドンコドンドコ回り始めた。
しばらく見ていた彩織が言った。
彩織「何で服着てるのよ!人間じゃないのに。服、脱がしなさいよ!」
(動物は服着てると可哀想だという意味。変態ではない・・・)
悠悟「服は「福」に繋がる。干支という縁起ものなら尚更だ」
悠悟の超能力はどんどんパワーアップしていった。子、孫、曾孫、、と出来ていくうちにとんでもないことになり、
それを恐れた悠悟はあまり使わないようにしていた。
が、元は「ネコ忍者」だったものが「干支忍者」にパワーアップし、それは良く彩織がリクエストしていたのだ。
干支忍者たちを見ながら、切なそうにする彩織。
悠悟が何か話し掛けるが、全部うわの空で「うん、そうね、うん」とただ相槌を打つだけであった。
・・・
あれは・・・かなり、、昔。
まだ子供が生まれていなかった頃。
「気持ちに応えるのが面倒臭い」と時折邪険にしてくる悠悟にとうとう彩織がブチ切れ。
彩織が浮気をしそうになったことがあった。
それが悠悟にバレ、悠悟は気付いたら無意識で相手の男を精神的・肉体的・経済的・社会的に追い込んでしまった。
彩織も連日深刻な眩暈(めまい)に悩まされた。
99%無いことなのだが、無意識で発動してしまったのだ。
(いつもは「意図的」)
その時、彩織は思った。
彩織『(この人は嫉妬しているんじゃなくて。自分、という存在がぞんざいに扱われたことが許せないだけなのよ)』
ふたりの家の目の前は海があり、砂浜が広がっている。
砂浜に体育座りをしながら、ずっと考え込んでいた。
気が付いたら夜になっている。
家に戻るかと思った瞬間。
?
海から龍が現れた。
『きっ きゃあぁぁぁっ』
彩織は絶叫した。
龍の上には七福神と、干支の動物たちが乗っていた。
神様たちは何かをバラ撒いていた。
綺麗な御守りであった。
龍は、『この龍パックに全部入ります』
と、やはり美しい入れ物を差し出した。
泣きそうになっている彩織に、
『悠悟様は嫉妬しているのではなくて
貴方様を浮気にまで追い込んだご自分を責めていらっしゃるだけです』
『でも嫉妬してしまうあの御方を許して差し上げて下さい』
と言った。
干支たちは龍から降りて、彩織に絡み付いて遊んだ。
・・・
彩織『悠悟が自分からこういういこと・・・超能力で話すとは思えないわね。
無意識のもの、なのかしら』
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現在。
彩織「(物凄く分かり辛い悠悟の表現。
いつものことだけど。
・・・干支忍者たちを見て、あの時の絡み付いてきた干支の子たちのことを思い出したわ・・・)」
ふわり。
「(浮気して御免なさい。芸能人にハマったってだけだけど・・・)」
彩織が黙っているのを見て怒っているんだろうかと焦って、急いで干支忍者たちの服を脱がす悠悟であった。
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