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愛凛と高志

何処かのカフェ。


愛凛(あいりん)と高志(たかし)。

ふたりは小学校の同級生。そして大学時代の友人である。


大昔に愛凛に或るおかしなことをした人物が今になって報いを受けた、、?のではないかと思われる事象があり、それで愛凛を呼び出した、、という訳だ。


元々携帯電話で話したのだが、、

カフェで待ち合わせしてゆったりしようかということになった。


愛凛「ソレね、文香(ふみか)、、私の義理の姪なんだけど。に聞かされたよ」

ズズーッ とアップルティーを飲む愛凛。


高志「あ、そうなんだ。電話では言ってなかったけど」

愛凛「単純にアンタと会いたかっただけー」

高志「あ、そうなんですか」

愛凛「いい口実が出来たと思ってね」


うえっ!

アップルティーって、、吐きそうになる。何でだろう。

げほげほっ

と、苦しそうな愛凛。


(間)


高志「やっぱり、、あいりーんさんって何かの力、、持ってるんじゃないかな」

愛凛「そうねぇ」

高志「昔からさ、ほら、な、何かあいりーんさんに悪いことする人がいると、か、必ず不幸になったりすることあったじゃないか。
あるんだよ」

愛凛「へっへー。だったらどうするよ」

高志「そうだな。いつでもお姫様扱いするか、、二度と近寄らないか・・・か、な」

愛凛「どっちでもいいよー  あっ」


思い出したように言う愛凛。


愛凛「逆に、私が泣きながらこの人が幸せになって、、って祈った人は富豪になったわ」

高志「あ、あれね・・・本当、びっくりしたよ・・・」


ちょい待ってね。


カチャカチャッ

愛凛がブルーベリーティーを持って来た。


愛凛「高志、あなたって少し自惚れ屋さんよね」

突然切り出す愛凛。


高志「(ムッ)そ、そ、そういう部分も、も、もしかしたら、、あるのかもしれないね」

愛凛「そういうところ大嫌いよ」

高志「(血の気が引く)」

愛凛「夢に好きな子が出てきたら「夢に出てくるってことはあの子は俺のこと考えてるんだー!」って考えるタイプね」

高志「(ぎっくーん!!)」

愛凛「まーでも。ちょっとくらい自惚れてもいいっとこあるけどっ」

高志「え、ど、どこですかっ」(思わず立ち上がりそう)

愛凛「顔」

高志「か、顔?」

愛凛「ハンサムだし。顔なら自惚れても許すぅー(肘ついて超~笑顔)」

高志「あ、いや・・・そんな。え、、あ、か、顔、、、」

愛凛「あれ、その記事すっごい握り締めて大丈夫?」


気付いたら、件の記事が書かれている夕刊をめちゃくちゃ握り締めていた高志である。


手の平には文字がびと~っとくっついているサマだ。


高志が手を洗ってきている最中。


愛凛はカバンからペンとノートを取り出した。


七難即滅 七福即生


わ~お

「(我ながらバランス良く書けたかも)」

七難即滅 七副即生 = あまたの災難はたちまち消滅し、多くの福徳に転ずる という意味。


遅くなって御免!

少し早足の高志。


愛凛「いーよ

ねぇ、見てよこれ!」

笑顔でノートの破ったものを見せる。


これで、良いことあるといいね。
と高志に渡す。



高志はしばしその紙を見つめ、泣いた。

ガタッ!

愛凛は立ち上がる。

「ちょっ、どうしたの高志。何、ホラ、みんな見てる・・・
高志?」


高志は席に座った。


なぁ~にぃ~ なんてドラマの周囲の声みたいな声が聞こえる中、、

高志は言った。

「昔さ、あいりーんさんが『良いことありますように』って同級生のなんとかちゃんがあったの、覚えてるかな」

愛凛はぼんやり思い出した。

「嗚呼、相当昔だけどね?」

「要らないよ!ってその子ゴミ箱に捨てて、、クラスのみんなは大笑いしてた・・・」

愛凛「・・・・・・」

高志「あいつらがどうなったかなんて知らないけど
・・・
何となく思い出したんだ」

愛凛「忘れちゃったよそんなこと」


テーブルの上の色んなゴミをひとまとめにし始める愛凛。


高志「あいりーんさん」

しばしの間。


愛凛「なぁーにー(ごそごそごそっ←ゴミを片付けている)」

高志「俺さ、大切にするよ、ずっと」

これ、、



高志の願いはたったひとつだった。

でも愛凛の願いも強力だった。


高志は愛凛のことが好きだったし、

愛凛も高志のことが好きだった。


しかしどうしても一緒になれない理由があったのだ。


世の中は微妙な不安定で成り立っている。

不安定な部分があるからこそ、安定を手に入れようとして、頑張っているのである。
何世代にも渡って。

現代はその「安定」が昔に比べて大分洗練されてきているだろう。


不安定だけど、安定。

安定だけど微妙に不安定。


それが世の中であり、人間関係のあり方なのだ。


高志と愛凛は「安定」しすぎるのだ。

そういう人間関係だってある。
が、、そういう関係というのはたいてい恋愛感情がゼロだ。全くゼロだ。
ゼロだからこそ安定出来るとも言える。


しかし、、このふたりは意味不明なことに深く想い合っている。

想い合っているのなら、スレ違いだって多いはず。不安定な部分は比例して大きくなるだろう。

しかし「完全に安定している」。


だから、自然が拒むのだ。

「きもい!」と。


という訳で、何となく不思議な力で一緒になれないふたり。


愛凛「ロマンチックなものとかさ、青春ものとか、コメディものとか・・・悲恋ものとか
いくらでも私たち、出来たのにね」

高志「たくさんありますね、こうしてみると」


木の葉が舞う並木道。


ねー高志

高志「はい?」


あたし、もうすぐでいなくなるけど、でも。・・・・・・絶対アンタのこと忘れないから


小刻みに、でもとてもゆっくりと何度も何度も頷く高志。


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そうして、愛凛(あいりーん)はいなくなった。


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