小さな世界 > 第2章「パン・オンライン」
それぞれが
パープルオーシャン。
パン・オンラインの名景色として有名な美しい海である。
ザザーン.....
ザーン..
愛花はその海を見ていた。
砂浜に「I miss you」と書いてサッと消した。
『私』の世界では「理々と裕也の世界」は作り話だった。
そして、その理々さんが今度は「パン・オンライン」を生み出した。
「(私の世界の上には、、また誰かがいて、更に上には魔法使いがいて
・・・最後に・・・)」
サーッ
指でピラミッドを描く。
下に行けば行くほど、「作り話度」が上がり、
上に行けばいくほど、「現実度」が上がる。
サーッ
サッ
指で復習するかのように描く愛花。
例えば、BにとってCは「本で見る世界」であり、
BにとってAは「大昔の世界」
のようなものである。
下に行けば「作り話」「創作話」
つまり「小さな世界」になってゆき
上に行くと「壮大な話」「伝説上の話」
つまり「大きな世界」になってゆく。
裕也がやけに愛花を恐れていたのは、
古代文明の「愛花」という剣士(愛称だが)を知っていたからで、
何処にもいない、『パライバ・ブルーの瞳』(もう絶滅した瞳色)を持っていた&
オーラなどからであった。
「(あの男、、あの世界の主人公のひとりか)」
ザザン.....
ふわっと髪が舞う。
キラッと愛花の瞳が光る。
「(帰りたい。強くなりたい)」
メイド『愛羽(アイユー)様、愛羽様、何処にいらっしゃいますのー
愛羽様ーっ』
樹に隠れ、見つからないように更に樹の上に登って潜んでいた、あの日。
メイド『愛羽様ー!愛羽様ー!』
『返事だけでも!お願いです・・・』
ポトッ.....
愛羽(愛花)『(私だって返事したいよ・・・)』
強くなりたくて、広大な森で修行していた日。
(すごく無茶)
愛羽。Dの層の人間である。
A~Gの丁度、中間だ。
愛羽はある世界の貴族の娘として生まれた。
生まれつき体が弱く、義理の両親は常に城(家)にいない状態だった。
しかし本が好きで、A層~G層の秘密などを知り、世界を冒険しようと思い立ったのだ。
それ以外にも体が弱い(頭も弱い)コンプレックスがあったので頑張ってみよう、という意図もあったのだが。
新聞、を知らない。プリンの開け方も知らない。
そういうことだった。
(本当の貴族は、ひとりで服を着ることが出来ない)
バッと立つ愛羽。
「黒騎士」なんて要らない。
もっと強くなりたい。
彼女は「黒騎士」と呼ばれる程強くなったのだが、
もっと恐ろしいくらいの強さに憧れた。
海の向こうを鋭く見る愛羽。
「(計らずも2段階下に落ちたが・・・
すぐに帰る)」
メイド2『パンて何だろ。へ~ぇ こんなゲームとかあるんだ』
愛羽『強くなれそう』
メイド2『でもこれゲームの世界でしょ。怪我とかしたらどうするんだろ。・・・三次元てのがあやしいよね
やめなよ。鍛えるとかそういうんじゃないし』
愛羽は2段下の「F層」、パン・オンラインに興味を持った。
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D層は丁度中間に位置する。
そのため、上の秘密も下の秘密も知りやすいのかもしれない。
(たくさん勉強しなければいけないが...)
巨大な、自分の城の図書館の天井を見ながら愛羽は思った。
「(癪だ。誰が操っているんだこの世界たちを...)」
ただ、愛羽が何となく分かったことがあった。
・・・
目をつぶる彼女。
「(G層が本当の支配者のような気がする)」
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ビクッ
ユウ「どうした?」
妃羽「あれ、今・・・」
ザザン....
波の音が聞こえたような気がした。