小さな世界 > 第2章「パン・オンライン」
剣
パン・オンライン。
三次元空間のオンラインゲーム。
パン、はギリシャ語で「全て」という意味で、
何故その単語が付けられたのかは不明である。
小さなグミに穴を開け、そこに『プレイ許可証』の丸い金属?を入れる。
その瞬間、まるでジェットコースターのような吸引力でパン・オンラインに降り立つのだ。
その時のショックで心臓麻痺にならないように、一応事前に健康診断を受ける。
(指定コンビニで受けられる)
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大きな草原。
大空。
理々「あー?」
理々は空を指さした。
裕也「I love you、って書いてあるな」
約束の日。
裕也も草原に腰を下ろす。
『モンスター徘徊地域』に×が書かれているエリア。
せっかちな理々が、裕也を引きずりおろす感じで降り立った、『パン・オンライン』。
理々「ふぅ・・・
どーして、藤波先生が剣士適正値MAXなんだろ」
ピーッ
ピピピッ
先程の光景。
職業適性試験で、
理々は全部平均より上で、バランスが取れていた。
裕也は他は全部平均か平均以下で、『剣士』だけ適正MAXであった。
裕也「へへっ、フェンリルナイト(最上位の騎士)になってみようかな」
むっ
理々はむすっとした。
理々「私だって頑張るわ。先生にも負けない!」
下を向いて言う。
剣士転職施設―。
受付の男性「そちらの男性(裕也)はもうMAXですので冒険のしようがない、ということに」
理々「え、何。で、でも折角ここ(パン・オンライン)に来たのに」
男性「そうですね。ではレベルはあれですが、適当に楽しむ感じで。はい」
裕也「聖職者とか格闘家とかは?」
男性「えー、MAXがありますと、他はちょっと・・・はい」
1時間後。
フェンリルナイトの装備をしている裕也と、
ファイターの装備をしている理々。
フェンリルナイト=騎士の最上位
ファイター=騎士の最下位
ふぅ、とため息とつく理々。
そうだっ
「先生、勝負しましょう」
同じ剣、同じレベル、同じ装備。
それらを揃える理々。
裕也は呆気に取られていたが、
この情熱があるから、勉強が出来るんだろうな。と思った。
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実際の力、性別に拠る力の差はない。
あるのはゲーム上の「Strength(力)」の値のみだ。
ふたりは剣を構えた。
「開始!」
理々が言った。
勝負はすぐについた。
剣が吹っ飛び、裕也が遠くに投げ飛ばされた。
?
理々「え?」
裕也は確かに本気ではなかったが(当たり前だが)
こうもあっさり負けるとは思わなかったのでショックを受けた。
裕也「開始!」
カキンッ!
キンッ!
キンッ!
キンッキンッ!
理々「はあっはあっ」
裕也「くうっ・・・」
ムキになっているのは明らかに裕也の方である
しばらくして。
カキーンッ!
裕也の剣が遠くに舞った。
ドサッと呆けたように座り込む裕也。
はあっはあっ
・・・?え?
素直に喜べず、意味不明な気持ちになる理々。
手を見つめる。
理々「バグ・・・(プログラム上のミス。誤り)?」
あはははっ
突如後ろから女性の笑い声が聞こえた。
振り向くふたり。
そこには、ミニスカートの黒いセミロングの女性が居た。
女性「ここでは、『ある法則』が通用している
バグではない・・・プログラミングされていることだから」
裕也も理々も目が回った。
「(だ、誰・・・?)」
しかし
「(何となく懐かしい気がする・・・)」
と思う裕也と理々。
何とも言えない空気が、辺りを包んだ。