ふることふみ

新解釈の古事記 
TOP章ごとの目次第7章:その他第12節:鳥

第12節:鳥

第2話:松


男性は、山を見つめながら・・・晴れている日の のどかな日に
手を後ろに組みながら、昔を思い出していた。

昔?
自分の子供の頃だとか 自分のことでは無い。

何だろう?と思うのだが何となく吸い込まれるように山を見返し、そして空を見上げた。


雨の日、坊主頭の優しい男の子、"人間"という生き物である。
その子にすごく優しくしてもらった。
その温かさが、愛情が嬉しくて、スズメはいつも幸せだった。

遥か昔、古代の古い霧がかった日本、冷えた空を飛びながら、幸せな気分で少年からもらった食べ物を頬張る、スズメ。


空を見て、にっこり、笑った。

そして急にスイッチングされて、現代に戻る。

空間とか、世界が切り取られたように、一瞬にして記憶が無くなる。

何かの記憶を思い出したのに、男性は何もかも切り取られたように忘れ
思い出すだのとか、それすらも、忘れた。

引き続き、にこりと笑い、空を見上げた。
優しい笑顔だった。


スズメ。
スズメはアマテラスの気から生まれた、尊い生き物である。
アマテラスから生まれた代表的な生き物はシカ、であるが、
スズメもそうなのだ。

彼もまた、鳥という種族で、ホトトギスと同じように人間と関わりを持ち
人間に恩を感じていた。

神々が漂う霧の中の冷たい空間を、その美しさを伝えようとしたホトトギスと、
人間の少年に優しくされて恩を感じたスズメ。


世間一般で知られている『古事記』では
天の岩戸の場面に於いて、「常世長鳴鳥(とこよのながなきどり)」という鶏が出てくる。

神社の前には、「鳥居」という門があるが、
鳥が止まるものとしての説がある。

天上から地上に降り、鳥居という門に止まり
神社を見下ろす...
そういうイメージが出てくるが、
まるで天からの使者のようにも思える。

そんな「鳥」という生き物の中でも
神聖なアマテラス産の「スズメ」。


彼は、優しくしてくれた少年に恩返しをしたかった。
彼は思ったのだ。

神様に比べ、神様に似た青人草(古事記では人間のことをこう表現されるとされる)は力を持たない。
寿命も短いし、神様たちが当たり前に出来ることを彼らは出来ない。
だから、僕がいいものを作って、生活を楽にさせてあげよう。
神様のような力がなくても、神様たちのような暮らしが出来るようにしよう、
そう強く思ったのだ。


彼は人間に生まれ変わり、人間の生活を豊かにするものをたくさん作った。

家電、と呼ばれるものである。

そして物の豊かさだけでなく、
強く生きていけるような指南もした。

彼は人間が、神様よりも好きだった。

人として生まれ変わった時、「世の中の役に立ちたい」と思っている本能は
炎を超え、まるで世間で言われているところの恒星のようだった。

それはまるで、白熱電球が輝くような......

ホトトギス、
フクロウ、
スズメ...


天から下った使者たちは
人間たちを 神よりも愛した。


だから鳥を大切にしましょう。


元雀のその人間は、いつもいつも、
亡くなった後も、ずっと人間たちを見守っている。

神様は何もないところからものを生み出せるが、
人間もまた、クリエイトというか
神様でも発想出来ないような文化、価値観、歴史を生み出している。

その文化活動さえも、彼は支援している。
スズメ。
その止まる木は。


第7章:その他「第12節:鳥 ー 第2話:松」

第12節:完

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