ふることふみ

新解釈の古事記 
TOP章ごとの目次第7章:その他第10節:相撲

第10節:相撲

第3話:鳴り響いて


雷電爲右エ門(らいでんためえもん)。
通算黒星が10個、勝率.962の、不世出の力士である。

令和の世まで数えても恐らく史上最強の力士であると思われる。
しかし何故か不思議なことに、彼は最後まで横綱になれなかった。

彼は少年と青年の間の頃はとても痩せていて、とても力士になれるような
風体はしていなかった。
どことなく少女にすら見えるような柔らかい印象で、・・・
それがいつのまにかごつい体になってしまい、ぐんぐん巨体の筋骨隆々の
青年になった。
白魚のような肌は浅黒い肌に、
柔らかい髪は固くなり、整髪料要らずの真っ直ぐで太い髪になっていった。

そのため、雷電の名が世に知れ渡れば知れ渡るほど、
「雷電は小さい頃から背が高かったらしい」
「いかつかったらしい」
「こんなエピソードがあるらしい」
と、有名力士にあるような小さい頃から凄かったんです話が広がっていった。

少年時代は男性から告白を受けただとか
そういうことを知る者はひとりもいないだろう。
(相手は雷電を女の子だと思っていた)


それは、思春期によく有りがちな、女親に対する反発と言うべきか―
祖母が一緒に住んでいたのだが、
思春期にかなりきつく当たってしまったのだ。

見る人が見れば、誰もが通る道だと苦笑するものであるが、
少々、行き過ぎてるようにも見えるかもしれない。
特にお祖母ちゃん好きの人からすると・・・。

勿論、それは当然思春期のみで、大人になれば
憑き物が落ちたように直るものだった。

しかし思春期を抜ける前に祖母は寿命で亡くなってしまったのである。



汚らわしい・・・
と、拳を握り締める神がひとり。



いつもは優柔不断で優しいミカヅチが、まるで雷最強の神、
「火雷神(ほのいかづちのかみ)」属性になったかのように怒りを覚えた。

祖母に対する、雷電の態度が生意気過ぎて、
ミカヅチは人格が一瞬変わってしまった。

「神聖な相撲の世界に、こんな・・・いくら強いとはいえ
このような人間は入れてはならない」

ミカヅチは全力で雷電が横綱になるのを阻止した。
タイミングだとか、たまたま不幸が重なった、とか
偉い人を運悪く怒らせてしまった、とか
横綱の称号を贈る立場の人たちがことごとく雷電の成績や強さを忘れてしまった、だとか
訳の分からない出来事が重なり、

とうとう最後まで雷電は横綱になれなかった。

あくまで思春期だけの反発であり、
元々祖母に当たるような、そんな性格の悪い人間ではないし、むしろ最強力士に相応しい精悍さを
持っているというのに・・・。


『逞しい男の子をお授け下さい』
あの日雷電爲右エ門の母親が一生懸命お地蔵様に拝んでいるのを見て、
気の弱い自分の代わりに是非強い力士になってくれ、と
力を授けた。

しかし結局、勝手に力を授けて勝手に力を阻止する形になってしまったミカヅチ。


悲しくてしょうがなかったし、
それでもまだ、生まれ変わるのをとても恐れて
自身の気の弱さに打ちひしがれた。


彼は未だ、力士としては生まれ変わっていない。


ただ、雷電に授けた力は、
何処かに伝わった。

放電するかのように。


電流は様々な赤ん坊に伝わった。


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雷(いかづち)とは、日本相撲協会の名跡のひとつで、
江戸時代には相撲会所の頂点に立つ人物が名乗ることを許された大名跡であるが、
その由来は定かではない。


第7章:その他「第10節:相撲 ー 第3話:鳴り響いて」


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