ふることふみ

新解釈の古事記 
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第8節:阿閇皇女(あへのひめみこ)

第4話:流れ


「い、いや、何突然」
そういう夫を無視して、話をうながす妻。

(時間を端折る)

「・・・まぁ。不思議な話」

「今、何て言ってた?」
頭を抱える夫。

「あ、ええと。あなたが別の時代の人間でしたとか。
稗田阿礼さんに秘密をお話したとか」

話してはすぐに記憶が消え、話を聞いた妻から、
自分が何を話したか聞き返す・・・謎のやり取りが繰り返された。

妻は、少しでもお疲れなのでは的なことを言ったら夫が
怒るとか傷付くとかそういうのを理解しているので、野暮なことは
一切聞かなかった。


「あのう・・・」
妻は遠慮がちに言った。

もうお記憶が消えていらっしゃるかもしれないですけど、
「何故かあの時記憶が消せた。君の記憶は君だけのもの」
あなたが私に言った、と伺いました。

↑このことも恐らく・・・お忘れになっていらっしゃいますよね?

宣長・・・この妻の夫である。
宣長は面倒臭くなった。

過労とか勉強のしすぎで頭がおかしくなったのかな、と思ったが、
変なプライドが働き、
「嗚呼、もちろん覚えてるよ」と格好付けた。


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稗田阿礼はしっかり安萬侶の話を聞き、胸に刻み、
そして意識的に記憶を消した。

普通は気合いで記憶を消すなど、出来る訳がないのだが、
何故か消せた。

この記憶は覚えてはいけない、彼の聖域に触れてはいけない。
強く思ったのだ。

そして何故か、亡くなる間際にそのことを話した安萬侶も、
何とか聞かなかったことにしたり、誰にも話さなかったりして、
秘密を保持してくれるだろうというような顔をしていた。


全てのものは相対的である。
なのに、何故時間だけが絶対的だと言えるのだろう。

時間以外が相対的であることがすなわち、
時間「も」相対的にある証拠ではないだろうか。

証明するにも、「絶対的な法則を持つ時間」という概念で証明しなければいけない限りは
時間の相対性は証明出来ない。


しかしある人物は
未来に生まれ、過去に生まれ変わったのだ。


これを、ちゃんと残したいとか
掴みたいとか
どうして自分は上り続けているのかとか

何を記し、人に知らせたかったのか?

安萬侶の記憶は、宣長の記憶なのであった。


融通が利かず、真面目でピシッとしているところも、
そして顔も変わらずに生まれ変わるところや、

例え時間が相対的とは言え、
「古事記が作られた時期に行きたい!」という強い思いで
本当に行ってしまうところといい

頑強な人物である可能性は高いと言える。


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歴史はまるで、彗星のようである。

幻にも見えるし、都合の良い美化された想い出かもしれない。
辛い思い出の記憶でもあり・・・

楽しみも、苦しみも何も感じ入ってじっくり味わうには
あまりにも速足で過ぎ去ってしまうもの。

「お疲れ様です」
最後、人に笑顔を向けない安萬侶が、稗田阿礼に手を差し出した。

これもまた、流れ。


第7章:その他「第8節:阿閇皇女(あへのひめみこ) ー 第4話:流れ」

第8節:完

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