ふることふみ

新解釈の古事記 
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第7節:兄と弟

第1話:兄と弟


フクロウはずっと、とてもひっそりとだが、
兄と弟の美しい話を人々に話した。

それが自分の使命だとも思った。
きっと本当の宝というのは、、お金は大切だけど
きっと、同じ父と母を持つ同じ血を持つ人間なのだと。

他人は他人だ。
血の繋がりはない。
でもそれだからこそ、心を通わせる必要があるのだ。
新しい世界を識る(しる)ために。

同じ血族だけでいれば窮屈になって、同じ価値観のまま
子孫は残って行くし、
依存度が高くなれば、イザ血族が全滅したり
病気や事故で失ってしまえば、今まで「一族と自分」が
まるで体と体がくっついた状態でいたのに、
何かでバッサリと斬られたような感覚になって
心だけ、五体満足がなくなってしまった人間のようになってしまうだろう。

だからこそ、他人とも(というか他の血族とも)関わっていくべきなのだろう。


でも、フクロウは個性的な、みながあまり考えはしない興味深い話をした。

フクロウはあれからおよそ千年以上生きた。

他人同士なんて、所詮分かり合えないのさ、と塞ぎ込んだ気持ちが
「その話」を丁寧に話すきっかけになったのかもしれない。

人々がどう生きたのか、
どんな話があったのか
それはいずれ「歴史」となる。

歴史は忘れてはいけない。
「今が大切だろう。過去は過去だ」なんて言う人間に限って、
その人がどう生きたのか、、、
後世の人は何ひとつ覚えたりしないだろうし、
存在自体忘れるだろうし、
あっさりと戸籍そのものもすぐ消える。
お墓だってすぐなくなる。

自分の歴史を大切にしないからだ。
だから、歴史、という概念そのものに興味はないし、
むしろ苦手に思うだろう。


フクロウは、忘れてはいけない歴史を人に話した。
それはある兄と弟の物語である。

「歴史は決して、個人の都合の良いように書き替えてはいけない。
個人のために創作するものでもない。
歴史は、汚してはいけないものなのです」

そういうフクロウに対し、
人々は変わった生き物だと思うこともなく、興味深く聞いた。
人々はその話の虜になった。


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宇遅能和紀郎子うじのわきいらつこ(愛称:ウジノワキ)という心優しい弟と
大雀命   おほさざきのみこと (愛称:オオサザキ)という明るい、気の良い兄がいた。

いつも自分をひいきして可愛がる父親に対し、ウジノワキは
戸惑い、苦笑する態度を取りながらも、
とても憎んでいた。

もしも自分が兄の立場になったら?
弟が新たに生まれたら?
今度冷遇されるのは自分の番―

結局、一番可愛い、子供を可愛がる、
まるで子供というより愛玩動物を可愛がる親が、愚かでしょうがなかった。

一方兄は、「おまえは真面目だなぁ」と言い
親の愛情に支配されない強い心を持てばいい、と話した。
弟の手前そう言っただけで、強がっていた部分が大半であったが。


・・・
だが。
兄は弟を残酷な目に遭わせた挙句、精神衰弱状態に追い込んだ。

弟がされたことは一切後世に残っていない。

兄は何故そうなってしまったのだろうか。
それは父親がどうしようもない人間だったからだ。
若い妻を可愛がり、
小さい方の子供を可愛がり、

いつまでもいつまでも 小さいものに依存する幼い心を持った天皇・・・
自分の父に。

兄の心はもう幼い頃に破壊されていたのだ。


弟も、きちんと分別のある自分を、密かに己惚れていた。
弟の方も、壊されていたのだろう。

親の愛とは、何と残酷なほどの支配力を持つのか。
人の人格形成に於いてここまで子供に対し、影響を与えるとは・・・


第7章:その他「第7節:兄と弟 ー 第1話:兄と弟」


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