ふることふみ

新解釈の古事記 
TOP章ごとの目次第7章:その他第6節:未恋

第6節:未恋

第1話:未恋


稲穂が美しく実る頃。
だいぶ人間たちが人数を増やし、国津神がほぼ国の魂になった辺り・・・。

天皇の代は四代の懿徳天皇  いとくてんのうの御世。

稲穂を刈り、泥だらけの状態で働いていた女性がいた。
名は勢夜陀多良比売せやだたらひめ(愛称:タタラヒメ)。

物覚えが悪く、聡明とは言い難い女性であったが・・・
いつもニコニコ笑顔で、誰にも優しく明るく接した。

容姿もパッとせず、
明るくて優しく、少し頭の弱い可愛らしい雰囲気が、そこの周辺住民の心を癒していた。


新解釈の古事記新解釈の古事記新解釈の古事記新解釈の古事記新解釈の古事記新解釈の古事記新解釈の古事記新解釈の古事記新解釈の古事記新解釈の古事記新解釈の古事記新解釈の古事記新解釈の古事記新解釈の古事記新解釈の古事記新解釈の古事記新解釈の古事記


スサノオの、実は頭の良い要素で生まれた動物(大きなお世話)、フクロウが
ホーホー、と鳴く夜。


切れ長の目をした、静やかな雰囲気を持つ男の神様が、
月を後ろにして山の中で物憂げな様子で、ある人間の村を見ていた。

神様の名は「大物主(愛称:オオモノヌシ)」。
スサノオの最高傑作―・・・と言ったら他のスサノオの御子神達に失礼になるのだが、
日本が物質的に豊かになった、大元の神である。

彼は物質を司っているからか、
全てを兼ね備えている。
目に見えるものは全て。
容姿も、健康も、服も、食べ物も、彼を祀る神社も―・・・
彼が願えばすぐに豊かになる。

だからこそ、目に見えない透明な何か、
水の中に砂糖を入れると水の中が歪んで見えるが、あんな感じの「歪んだ何か」をふにふに浮かせて
歩いているタタラヒメを見て、
本来なら目に見えない、精神的な何かを持っている彼女に興味を持った。


・・・

それが一体いつくらい前になるだろう。
オオモノヌシは、いつもその頃の思い出を思い出し、
その都度その都度懐かしみ、涙を流すのだった。

恋愛というものは、精神でするもの。
性欲や交合などは肉体でするもの。

恋愛というものはとても面倒で辛くて、苦しいものだ。
肉体的なものに溺れたら、どんなに楽か。


タタラヒメをさらい、
山奥で「絶対に子を生んではいけない、結婚も駄目だ。
君はそういう運命。
きっと災いが起こるから、だから結婚とか子供生むとか
絶対に―・・・」
などとこんこんと諭し、

彼女に貞節を強要し、
自身の想いを「少しも」告げずに
彼女を元の村に戻した。

そんな、意味不明な想い出。


タタラヒメもタタラヒメで頭が弱かったので(知的障碍という意味ではない)
何か知らないけど、結婚したら悪いことが起こるんだな、気を付けないと。と
深く考えずに納得し、その決まりを守ろうと心に決めた。
勿論、オオモノヌシの気持ちなど、気付きはしなかった。

オオモノヌシは何度も何度も、
気持ちを伝えようとした。
が、彼女を前にすると動悸が激しくなり、その動悸で体が揺れ、
重心が保てなくなるのだ。


ちなみに、この頃の人間は、
神が姿を現わしたい、という意思を持てば
人間は神の姿を視認出来た。


オオモノヌシは顔が紅潮してしまい、目が回り、
何も出来なくなった。
そのため、何も行動に移せないのだ。

心がこんなにまで動かされるという現象に、非常に驚いた。

体だとか力だとか
実際的なものだとかが
一切通じない。


ふたりの様子を、一匹のフクロウが、いつも優しく見守っていた。


第7章:その他「第6節:未恋 ー 第1話:未恋」


BACK「第5節:伏雷神
NEXT「福老


Copyright© (C) FUWAFUWA All Rights Reserved.