ふることふみ

新解釈の古事記 
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第2節:オサム記

第6話:オサム記(6)


玉虫姫が用意した絵を描く道具は、
それはもうしょぼいものばかりだった。

昆虫は、
葦原中国の極めて穢れが強いところに夕刻から夜の間だけ行くことが出来るのだが、
穢れが多いところはたいていゴミ捨て場のようなところばかりである。

「文句ある?」

しょぼい絵描き道具を見て固まっているオサムに
上から見下げて玉虫姫が言った。

しかしオサムはプロである。
生前はずっと絵を描いて人の役に立ってきたのだ。

サッと絵描き道具の汚れを掃い、
真剣な顔をして玉虫姫を描き始めた。



・・・
しかし何度も何度も、オサムは描き直した。
髪をかきむしりながら、これじゃないこうじゃない。と

玉虫姫は
一枚だけそっとオサムに放り投げられたものを手に取り、
見た。
「うわ、そのままの顔」
―つまり、現代で言うところの「写真のような絵」ということである。

何故これが駄目なのか。完璧じゃないか、これを持っていたい、と
玉虫姫は戸惑いながら言うのだが、

やはり両手で頭を押さえ、
「違うー!
それじゃないんだーっ!」と
キバを生やさんばかりにオサムは言った。

戸惑う玉虫姫に、
オサムは言った。
かなり疲れ切った、且つナイスミドルのような顔である。

「はるさんを描いた時のような・・・
どんどんゆらゆら変わる絵を
僕は描けたのに。
ただの絵じゃなかったのに」

女性は美しい
存在そのものが

明るい笑顔
泣いている顔、
抗議している顔

絶望的な顔

可愛い女の子

女性は袖をゆらゆら揺らして

そしてくるりと背を向けて音もなく去ってゆく

女性は何度も何度も
何度も何度も

例え死んでも、黄泉の国行ってしまっても

どんな姿になっても


「・・・僕はきっと・・・
なつさんの悲しい気持ちを、、描けたんだ」

男の、女を求める愛しさ。

それがきっと

あの絵なんだ。。


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黄泉の国には、一見出口に見えるような、光が出ている場所がある。
そこが、肉体が土に還るまでを待つ場所なのである。

長い時間が掛かるイメージがあるが、
葦原中国では完全に土に還るまでは少し期間があるが
黄泉の国では四日でほぼ土に還る。


オサムは自分がまた人間として生まれ変わる存在だということを玉虫姫に伝え、
必ず、いつか君を、君を僕の納得行く絵として描いてみせる、と約束した。

「あのねぇ、生まれ変わりは奇跡の確率でしか起きないんだよ。
あなたは出来るんだろうけどっ」

オサムは言った。
「でも いつか、必ず描きに行くよ」


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玉虫姫は、絵を描いてもらったことで『大切にしてもらった(注目された?)証明』が
出来たので、このまま魂の昇華が出来ることになった。


第7章:その他「第2節:オサム記 ー 第6話:オサム記(6)」


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