ふることふみ

新解釈の古事記 
TOP章ごとの目次第5章:大国主の話

第5話:コトシロ


コトシロと、ミカヅチが、
ある林と森の中間くらいの野外で、
小さな空き地になっているところで
火を焚いて、食事を取っていた。

コトシロは憂いに満ちた目で下の方を向きながら言った。
「・・・それはアマテラス様にも落ち度があるのではないかな」

思わず変な顔になるミカヅチ。
何故か魚を焼いたものを食べている。

コトシロは、ミカヅチが葦原中国に降ろされたことを聞き、
原因について疑問を抱いて口を開いたのだ。

何故、天上のものが地上(葦原中国)に落ちてしまわないように、
ちゃんとした警備を付けていないのだろう、
君に本当に落ち度はあるのか?
何もせずに「(破片を)落としたからおまえが悪い。・・・はないよ」

ミカヅチの境遇と、アマテラスの判断に疑問を抱いたのだ。

ミカヅチは言った。
「違う。違うんだ。全部俺が悪い!俺が悪いんだよ!
全部俺が悪い!」

大声を上げたら普通は逃げていくはずなのに、
何故か周辺にリスらしき小動物がちょこちょこ集まって来た。



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『え?それは○○だよ』

数週間前に知り合った、天津神、ミカヅチ。

コトシロ「(君は色々なことを教えてくれた。
とても優しい神だった。
何か力になってあげたいけど。
彼が優しすぎるから。
自分が悪いと自分が悪いと。
・・・もう、任務は終わったのに、高天原に帰らないのか。
アマテラス様への後ろめたさだろうか)」


ふたりのいる場所の、だいぶ後ろの方には、海が広がっていた。
白い鳥が海をめがけて飛んで行った。


ミカヅチは、不器用ながらも、誠実に
ヤマタノオロチの被害に遭った女性たちを探し出し、
ひとりひとりの世話をしたり、心のケア、生活のケアを一生懸命した。

その誠実さに、女性たちは一か月ほどですっかり心が癒され、
どう考えてももう大丈夫なのに必要以上に面倒を看るミカヅチを
「責任感が強すぎで心配です・・・」と、とても心配した。

もう地上に降りて130年―・・・
「(もうアマテラス様には会いたくない。
迷惑掛けたくない。
だからここでどうしていいか分からないが―
とりあえず雷を操ってここを守り、
荒ぶる神を追い払おう)」

荒ぶる神は、現在で言うところのベトナムの地雷原の地雷のようなもので、
何百年掛けても取り切れない・・・とかそういう類のものである。


元天津神のミカヅチは、歳を取るのが極めて遅かった。

天津神は高天原にいるため、天にいるため・・・寿命はない。
永遠に生きる、が
葦原中国の神たちは「寿命」がある。
ある、というより葦原中国に降りた時点で、寿命、というものが発生する。

葦原中国の神たちは「国津神」と言う。
寿命があるとはいえ、彼らもまた、歳を取るのが遅い。

ミカヅチとコトシロは、130歳以上の歳の差があるにも関わらず、
同じような歳に見えた。


コトシロは、領主の役を押し付けてしまったふたりの妹をよく思い出した。
特にサクヤヒメは任せて下さい、と明るく元気に送り出してくれたが、
元気にしているだろうか・・・と心配した。

冒頭に出て来た、林と森の中間くらいの場所で、小屋を建て、釣りをおじいさんに教わり、
猟をたまにして、偶然会うミカヅチと雑談したりした。

山には特に荒ぶる神がいるので、ミカヅチはその近くの山にほとんどいるのである。

その山には、荒ぶる神がイノシシと融合した『赤イノシシ』と呼ばれる恐ろしいイノシシがいて、
人が何人も亡くなっているため、
常にそのイノシシを退治するためというのもあり、ミカヅチは忙しかった。
(山はいくつも連なっているので、広い)


コトシロの優しい人柄は、後ろめたさを持って悲しく生きているミカヅチの心をとても癒していった。


第5章:大国主の話「第5話:コトシロ」


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