ふることふみ

新解釈の古事記 
TOP章ごとの目次第5章:大国主の話

第11話:太玉御剣(ふとたまのみつるぎ)


ミカヅチはあまり綺麗とは言えない剣を持って、
海に立っていた。

ヤマタノオロチから出て来た宝剣のように、
天上のものは地上ではその素晴らしさが反映されず、
ただの剣にしか見えない。

ミカヅチが本気で造った剣は、
高天原で造った剣と同じで、
やはり葦原中国ではその素晴らしさが埋もれてしまっていた。


夕刻、ミカヅチは何かを言い、
剣を切なそうに見つめ、海にサブサブと入って行った。

剣の切っ先だけで、
飲み込んだヘビが、時間を掛けて「ヤマタノオロチ」という異形に変化してしまった。
ヤマタノオロチは胴体が山八個分の大きさである。

たかが小さなヘビが・・・

そんな小さなヘビを 切っ先だけで大きな異形にするだけの力があるなら
大層な剣を造れば、その剣は・・・っ!

赤い、橙色のとても色の鋭い夕陽。
ミカヅチはどんどん海の中に入って行く。


そして、海の中を泳いでいく。


海の中は広くてワクワクするミカヅチ。


たいぶ遠くまで行ったと思われる場所で、
そこは若干寒かったのだが・・・
そこでミカヅチは剣に命令した。

「この先、この葦原中国に害を及ぼすもの、おまえ・・・太玉御剣  ふとたまのみつるぎ
飲み込み、食ってしまえ!」

剣はナマズのような動物の形になり
やや陽気な感じで承諾した。


サッとナマズの形をした剣は遠くの海へと泳いで行った。


ミカヅチはたまに、海に降り立ち、
埋めたと思われる剣の方角に向かい、合図を送った。

剣はその都度ナマズの形に姿を変え、
透明な形で海の上に浮かび上がり陽気な挨拶を返した。


その剣はミカヅチの汗と血が混ざっている。
ミカヅチが生み出した神、と言ってもいいだろう。



その剣を元に、今何が出来ているのか。
現代で言うところの「マグマが変化した正体不明の物質」と言ったところか。


剣は今も海深く眠っているのだが・・・
さすがに何千年も埋まっていることに飽きたのか、
剣は魂を分割して、人間へと生まれ変わった。

これが何千年も経った後に生まれた、「麟太郎(りんたろう)」なる人物である。

彼は、日本に害を成すものは巨大な力を以って撃退出来る力を持っていたので
(あくまで潜在的だが)
余裕を持って外国と渡り合える視点が持てたのであった。


ミカヅチは、己の巨大な力で何か出来ないか、と思って
こういうことをした。

剣の切っ先だけで、ヘビをヤマタノオロチにした。
―そんな巨大な力を何か大きなことに使えないか。
この国(葦原中国)を護れないか、と。

力の強い、そしてどこかに置くことでその物体を途方もなく強くする剣を。
高天原で造るような剣を、海の中に埋めて置く
―・・・どんな力になるのだろう
途方もない。



―一か月後・・・



白美香比売と一緒に遊んだり、荒ぶる神の退治に勤しむミカヅチ。
近くの集落の年配の女性たち(人間)と仲が良く、
一緒に色んな場所に造った刀剣を設置しに行っている毎日だ。


剣を地面に突き刺し、
持つ手の側を地面に突き刺し、剣の先が上に向く、という刺し方なのだが―
その剣の先に胡坐を掻く、ということをして周りを沸かせた。

後にこの「剣の、手で持つ部分を地面に突き刺し、上になった剣の先に胡坐を掻く」という
謎のスタイルが、ある物語を書く上で採用されることになる。


第5章:大国主の話「第11話:太玉御剣(ふとたまのみつるぎ)」


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