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第5章:大国主の話

第1話:オオナムチ

新解釈の古事記


天之冬衣神  あめのふゆきぬのかみ、スサノオの五代下の子孫である。

彼は食べても太れずに、脂肪のない体でいつも寒がってばかりいる妻のために、
温かいモコモコの服を作り、それがとても温かいと少しずつ周りで評判になり、
それがきっかけで温かい服を作る職人になっていた。

そのようなことをしなくても、現代で言うところの『大地主』にあたるため、
職人になる必要はないのだが。

・・・
スサノオがクシナダヒメと結婚し、五代下の子孫・・・
だいぶ時間が経っている。

スサノオはまだ生きていた。
寿命がまだ尽きていなかった。



ある夜―

家の中で火を焚き、天之冬衣神(愛称:フユキヌ)は妻にそっと言った。

もう何十人も子供を作って、みんな、生まれてすぐ死んでしまった。
だから、何人も妻を変えて、子供を・・・
それでも死んでしまって。

妻「もう、八十人も・・・死にましたね
私は傍にいた友人で、この度妻になりましたが・・・」

中年とはいえ、かなりの美形(和風ナイスミドル?)は妻を見た。
薪が燃える音と共に、火がパリッと小さく上に上がる。

妻は外見はパッとしないが、
とても優しい女性だ。
こんなに優しい女性はいないだろう。

きっといい子が生まれる。。
けど、もし死んでしまったら、とても耐えられない。

今までの妻は、子孫を残すための道具?だった。
女性たちもそのつもりだったから別に何の問題も無かったが・・・。

フユキヌは妻を見る。
この女性に今度我が子を作ってもらう、のだが、
もしも次夭折してしまったら、、

フユキヌは目をつぶり、こぶしを握った。

―もう、子を作るのは諦めよう。。



数か月後、男の子が生まれた。

あまり大声で泣かないその子に、
「これで、スサノオ様の血が、、繋げられるだろうか。
今度こそ」
と語り掛けて、撫でた。

フユキヌは、どうしてもスサノオの血を、自分の代で絶やしたくなかった。
次々と我が子が夭折する不幸に見舞われ、何が何でも子供を、、子孫を作らなくては、強く思ったのだ。
それは大雪が降る日だった。
彼は憂いのある顔をしながらも、強く誓った。

現在の妻は、結婚してすでに五年経っており、
努力しても子供は出来なかったが、何故かフユキヌは手放さず、
八十一人目の子供が出来るのをひたすら待った。

そしてようやく出来た子なので、フユキヌは可愛くてたまらず、
夭折しないように、ずーーーっと傍で妻と一緒に大切に大切に育てた。

大穴牟遅神 おおなむちのかみ(愛称:オオナムチ)、と名付けられたその子は、
夭折せずに、健康にすくすくと育った。

最初の頃こそは一日中見張り、面倒を看る召し使いの女性たちを付けていたが、
十五歳頃になって、ようやく笑みをこぼして安心するフユキヌ。


オオナムチは、八十人も兄たちが死んだのを思い、そのうち俺も死ぬんだろうか、と
思っているうちにすっかり爺さんのような人間になった。
「いつ死んでも俺は受け入れる」、とでもいうのか・・・


そして、怪我だとか病気で命を落とさないように、と
医療、薬草の知識、学問を徹底的に小さい頃から学ばされた。


父親は時に厳しく、
時にはすがるように、
時には祈るように、
オオナムチに繰り返し言った。

「・・・私は、スサノオ様の血を絶やさないように、努力してきた。
人数で分かると思うが。亡くなった子の。
・・・だから、おまえにはたくさんの子を作って欲しい。
私は八十人の子を失った。だから、
それ以上を作って欲しい」


オオナムチは、この父の願いを、しっかりと胸に刻み込んだ。


第5章:大国主の話「第1話:オオナムチ」


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