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第4章:葦原中国での話

第3話:五穀豊穣

新解釈の古事記


遅いなぁ、とスサノオは思う。

かなり待ったが、全然彼女が来る気配はない。

「(寝ちゃったのか?いやいや)」
そう思うほど、とても遅い。


厨房では、
オオゲツヒメが料理を大量に作っていた。
「(どうせ、おかわり!って言われるから、あらかじめたくさん作ってるのよ)」
それでこんなに遅いのであった。

スサノオは思う。
「(そういえば、食物の神だって言ってたな。
体から食物を出して、それで調理するってなると・・・
一から料理しないといけないから、大変だよな。
だから時間掛かってるのかも)」

よし!手伝うか!
と厨房の方に向かう彼。


たくさんの、薄い扉を開け、

厨房に入り
「手伝いますよ!」

とオオゲツヒメの元に行くスサノオ。

くるり、とオオゲツヒメが振り向いた。

目から鼻から口から、耳から、
エプロン(調理服)の脇に穴が開いているのだが、
そこからも・・・

後ろからたくさん穀物がわさわさしているが、
後ろの穴たちからも・・・

体のありとあらゆる穴から、たくさんの穀物たちが成っていた。

スサノオは足が速いため、
オオゲツヒメが後ろ姿からでも穀物がわさわさしていることに気が付かなかったのである。


食物の神とはそういうことか、と悟った瞬間に、

「ぼ、僕もうお腹いっぱいになっちゃいました」
とスサノオは逃げようとした。

待ちなさい!とオオゲツヒメは追い掛けた。

「よくも私の恥ずかしい姿を見たわねぇ」
彼女は一気に怒り心頭になってしまった。

逃げるスサノオをとにかく追い掛け、
捕まえ、
それをスサノオが言い訳を付けて逃げようとする、その繰り返しが行われた。

「僕用事があって」
「遅刻する!」
「バイトに行かなきゃ」
「電車に間に合わない!」

その都度その都度、スサノオをむんず、と捕まえるオオゲツヒメ。

「こうなった以上、生き恥を晒して生きていけない。
私を殺して」
オオゲツヒメは怒りの形相を抑え、凛として言った。

・・・
願いごとをしていたの。
私の調理するところを見た神がいたら、
私の・・・体の穀物を、葦原中国にばらまこうって。

高天原だけじゃ、気の毒だから。

彼女は生まれた時、
あまりの優秀さに、カミムスビにスカウトされてしまい、
「是非高天原に!」と誘われてしまったのだ。
彼女は天津神なのだ。

だから、彼女の出す食物は、高天原のものなのである・・・。


スサノオ「・・・高天原の食糧を、ここにも、分けてあげたい、って・・・」
あなたは・・・
彼は思わず下を向いた。

「いつかこんな時が来ると思った」


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スサノオは、調理器具で樹を切り、
(剣を持っていないので)
立派な棺を作った。

急いで様々な花を摘んだが、
妖艶で美しく、現代風で言うと女優のような彼女に、
様々な色の花は似合わないと思い、
白い花だけを集めて・・・

オオゲツヒメの遺体を棺に入れて、白い花で棺の中を埋め尽くした。

そして心を込めて埋葬した。

彼女を弑した時に出たたくさんの穀物の種は、ひとつ残らず回収し、
麻袋に入れた。

「また・・・会えるよね」
スサノオはしばらくひざまずく格好で少し、泣いた。


第4章:葦原中国での話「第3話:五穀豊穣」


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