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第4章:葦原中国での話

第20話:破片

新解釈の古事記


建御雷之男神(たけみかづちのおのかみ)。
タカミムスビの息子、知恵の神:思金神   おもいかねのかみ(愛称:オモイカネ)。
に創られた、雷の神である。

タカミムスビは、カミムスビと並び、高天原の『上』にいる存在なのだが―

タカミムスビは悩んでいた。
立場が上すぎる存在でいいのだろうか。
自分を倒してくれるような、そんな存在が欲しい。

イザとなったら私を倒してくれるような。
私を制してくれるような。

ミナカヌシがいつでも、タカミムスビが何か悪いこと?をしたらどうにかしてくれるだろうに、
タカミムスビは、そういうのは自分でけじめをつけたい、と思っていた。

そうして、オモイカネに「自分を制してくれる神」を創らせた。
自分で自分を倒せる神は、自分では創りにくい。
ということで、息子のオモイカネに創らせたのである。


そして生まれたのが建御雷之男神(愛称:ミカヅチ)であった。

雷の神―・・・樹にとって恐怖の対象だ。



しかし
彼は優しすぎて、優柔不断すぎて、力があるのに全然力を出そうとしなさすぎて
タカミムスビは「あれじゃ駄目だ・・・」とミカヅチへの期待を捨てた。

オモイカネも、全力でミカヅチを創ったので、
もう神様は、雷の神様は二度と創れない。


数年前―・・・

ぼろぼろのはるさんの前に、タカミムスビが現れた。
黄泉の国である。

嬉しくてたまらないというタカミムスビは
『私は、私を倒してくれるような、・・・刺激を与えてくれる神が欲しかった。
彼らにそれが見える』
と言った。

是非譲ってくれ、と。


言われるがまま、はるさんは雷神たちを譲った。

雷神たちは、とても恐ろしい顔をしていて、造り主であるはるさんに
会釈をして去って行った。



ミカヅチは激しい屈辱感を覚えた。

何故・・・天上の神である、雷神の自分ではなくて
地下の国の雷神が・・・
と。

雷の神は自分ではなく、自分はもうただの天津神で、
『雷神』は、はるさんが生み出した八柱の雷神なのか・・・
ミカヅチは悲しんだ。


そんな時、天上の火が強すぎて、製鉄が難しいと言う事柄を聞きつけ、
雷の神の自分なら、火と相性がいいし、何とかならないか。と思った。

そして、迷う暇もなく、「雷の神様の貴方なら何とか出来るかも」とたくさんの神たちが
ミカヅチにお願いしに来た。




「くそっ!」
ミカヅチは何か月か前の記憶を思い出して、製造中の剣を槌(つち)で叩いた。

だいぶ出来上がっているぐらいの段階だったのだが、

剣の先、ほんの数センチが割れている。

それをいつの間にか、何かの動物がパクッと口にくわえ、そして外に出て行った。


「口にくわえたら危ないだろう」
優しいミカヅチは、数センチとは言え、刃物をくわえている動物を追い掛けて行った。

が、下の国の境い目にまで行ってしまい。
ミカヅチは追い掛けるのを諦めた。


動物は下の国、葦原中国に行ってしまい、
そこでくしゃみをして剣の破片を落としてしまった。

それを、ヘビが飲み込んでしまい。


数年かけて、神格化してしまったのだ。
雷神ミカヅチの造った剣の破片を、体を傷つけることなく体内に置く・・・
そしてヘビはどんどん神格化して、とんでもない状態になったのだ。

元々、ただのヘビが、山八つ分の大きさを持つ、そして頭と尻尾が八つのどうしようもない怪物に・・・。

ヘビをヤマタノオロチという怪物にした『剣の破片』は
宝剣として育ってしまったのだ。


第4章:葦原中国での話「第20話:破片」


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