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第3章:神々の物語

第10話:秘密

新解釈の古事記


タマノヤは微笑んだ。

「何の縁か、こうして、アマテラス様のお目に触れることになったのです。
アマテラス様がいなくなる以上に悲しいことは何もありません。
・・・この勾玉はアマテラス様に献上致します」

さすがにアマテラスは目が輝いた。
そして数秒後に
「とても、嬉しいです」
と言った。

せ、折角だから私の鏡も差し上げます。
二時間で作ったにせよ、渾身を込めて作りました。
献上したいと思います。

と、少し緊張してイシコリドメが言った。
後ろの、鏡を持っている神から鏡を受け取り、
捧げるポーズで鏡を上に上げた。



しばらくして。

「この洞窟は何なのでしょう」
アマテラスは言った。

本当だ。
こういう場所をそもそも知らなかったし、
こんな雰囲気の場所があるとは知らなかった。

と皆が首を傾げた。

恐ろしいとばかり思っていたが、
アマテラスが見つかった喜びもあり、
だいぶその恐ろしさに神々が(少しは)慣れたのだ。

「その秘密は私がお話しましょう」

入口から、ツクヨミが白馬から降りて、やって来た。


「こうなった以上は、お話するしかありませんね。
この洞窟は、・・・というかこういう場所は、世界のいくつかに存在します。
ミナカヌシが創ったものです」


彼の話はこういうものだった。
出ることも出来ない、力の類が一切使えない。
そういう場所をいくつか作ることで、
高い地位にいる神々が、力を持ち過ぎないようにしている、と。

秘密があることで、牽制している、というようなことを言った。

皆は呆気に取られた。
ミナカヌシ(天御中主神)様が、と。

同時に、秘密を知ることが出来て良かった、とも思った。

なぜ
「何故、あなたがそれを知っているのです」
アマテラスは心配そうにツクヨミを見て言った。

いつの間にツクヨミが?と。

・・・
「目立たないですし、皆が訊いたりすることもない。
と思ったのでしょう。
ミナカヌシが」

アマテラスが慌てて言った。

「こうなったのは全部私のせい。
私がミナカヌシに謝っておきます」


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造化三神の住まう場所は、
高天原よりさらに上に位置している。

その場所へは、アマテラスとツクヨミしか入ることを許されていない。

古くからいる神・・・独神(ひとりがみ)や双神(ならびがみ)などは、
「このふたりなら」と認めている。

ちなみに、高天原に住まう神々は、タカミムスビとカミムスビが創った。


アマテラスより、かなり上の方と思われる玉座のような場所に、絹で織った透かしカーテンの中から
ミナカヌシが、アマテラスを見下げた。

「まぁ、これで天津神たちもこりただろう」

そして ― ミナカヌシは透けていてあまり見えないのだが ― 立ち上がって、横に歩きながら
「しかし知られてしまったことは・・・どうしようもないな」
と言い、

また新たに、権力牽制のための何かをつくらないと、ということになった。

「ツクヨミに宜しく」と言い、
アマテラスは遠慮がちに「は、はい・・・」と言った。


第3章:神々の物語「第10話:秘密」

第3章:完


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