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喬一は、「2つ前の前世」の記憶を思い出した。

忘れられる訳がない、想い出の人。

前世から今の世に移っても、、

そして天界に自由に動ける身になっても、、


忘れたことなんて一度もない


メレディス「あなたにとって、、私は花でしかないんだわ」


11月。

霜が降りる寒い日だった。


メレディスは喬一を恨まず、哀しく天に昇って逝った。
遺された肉体。冷たかった。でも顔はとても美しかった。



『何をお釣りになってらっしゃるの?』


おっ?

びっくりした。


今度は「1つ前の前世」の記憶である。


『私の名前は沙奈(シャナイ、さな)』


僕は


イヴァンです。


黒髪ロングストレートの魔術師。

それが沙奈だった。


『秋桜、いかが?』

彼女が最初にくれたその花。


今の世で美織が半死半生の傷を負った時に、手当てしていた小屋の外で栽培していた花。


昔の、、

「前世の」みぃちゃん。


『秋桜、いかが?』


他にもちょこちょこ花をくれた。

一輪ずつ。


もう倉庫はいっぱいだと言うと、サッと引き下がり、どこかへと消えて行った。


彼女は何故花を贈ってくれたのか。

プレゼント用なのは分かってるけれど。


メレディス「あなたにとって、、私は花でしかないんだわ」


喬一(の2つ前の前世)は、実はメレディスを別の男に渡そうとしたことがあるのだ。

メレディスに飽きて。


メレディスを想っているという男に、「じゃあいいか」と簡単に渡そうとした。


贈り物を、、プレゼントを渡すかのように、、

花を一輪渡すかのように、、


メレディスを渡そうとした。


メレディスは何も言わず、哀しそうな顔をしてうつむくだけだった。

何かを言おうものなら、喬一が「面倒くせーなーこいつ」という態度をすることが分かっていたから。


相手の男は、喬一にすっかり呆れ、

メレディスを自分のものにしようとはせず、

「幸せになって」

と両肩を抱いて言った。


喬一はそんな姿に、自分はメレディスを他の男に渡そうとしたくせに

激しい嫉妬心を抱いた。


それは、メレディスを実は想っていたからではなく、

花だと思っていたからだ。


俺ん家の花に勝手に触ってんな

或いは、、
犬や猫だと思っていたからかもしれない

俺の犬に勝手に触ってんな
おまえもおまえで尻尾振りやがって!

主人は俺なのに!


喬一はメレディスを人間扱いしていなかった


これがもし美織なら、何か言っていたり、
アルフォンスをビンタした時のように

バシッと何が言っただろう


しかしメレディスは全てが分かっていたのだ。


喬一には何を言っても無理であると。


何かを言ったところで、、


うるせーなー 犬のくせに きゃんきゃんきゃんきゃん

あ〜あ!

そうやって呆れて肩をすくめる。


・・・こんな風に、全く聞いてもらえないのだということを。

そんなことが分かっていたから。


人間扱いしない人間に対し、何を言っても無駄なのだ。

本人は悪意を持ってやっている訳ではない。

何となく。なのだ。
それゆえ、途方も無く根が深いと言える。


そういう、、前世を 何故か次の世で知っていたから、、

喬一は 何かを抱えるような そういう人間になった。


人に迷惑を掛けたり、、

人を動物扱いしたり

人を植物扱いしたり


もう しない


あの俺は なんだったのか


メレディス、、 君はずっと俺を恨んでいるだろうな

彼女はあの後すぐ、脳に病気を患って 冬の香りが漂う頃に逝ってしまった。


喬一「(脳だから、 きっとショックで脳がおかしく、、とかそういうことなのかな)」

人を恨まないあのメレディスのこと、 きっと恨むことさえしてくれない

恨まれればどれだけラクだろう


『何をお釣りになってらっしゃるの?』

1つ前の前世で声を掛けてきた、美織の前世の人。


『私の名前は沙奈』

彼女は、

片目だけ光っているように見えた。


それはまるで

「あなたっていいかたね」

と言われているみたいだった。


両目ならば、何かを見抜くだとか

そういう緊張を感じさせるが、


片目だけだと、何となく穏やかな感じになる。


数日経って、秋桜を一輪もらった。


花をたくさんくれる沙奈は

何を 言いたかったのか


彼女はシーフ系職(短剣を使う、身軽な職)の男と結婚し、

付き合いは途絶えたが、、

少し経ち、彼女はまた自分の元に来るようになった。


喬一はずっとメレディスのことがあったから、

沙奈がいることが、罪悪感を忘れさせてくれるきっかけとなって、
心が和んだ。


そのうち、沙奈の夫が 「俺よりイヴァン(喬一の前世の名)さんの方がお気に入りなんだな」
と厭味を言うようになった。


沙奈はそれから全く喬一の元へ来なくなった。



そして・・・今の世。


レオナルド皇子の腹違いの妹ということで、お城から逃げ出した幼い美織。

そんな美織と仲良くなった喬一。


喬一は、分からなかった。

どうして、自分は2つ前、1つ前の前世が視えるのだろう。

他の人は視えないみたいなのに。

でも、そういう事柄を、美織のある要素が打ち消してくれるようで、
彼女とずっといた。

彼女の方も適当に喬一と遊んでいた。

禁呪を授けられ、天界に行けるようになっても、、
美織と一緒にいた。

(※禁呪については「茶色い犬」参照)


・・・

・・・

・・・


うぐっ


なんだこの感覚は

頭の中で何か回ってるような


麗帆の言葉が、、ひとつひとつ断片的に文字の言葉として浮かんでくる。

もはや文章どころか 単語としても成り立たない。


沙奈を無残にも川に突き落とす映像が思い浮かんだ。


どうでもいい


みぃちゃん


あのさ

メレディスも天帝も沙奈もどうでもいい

面倒臭い


再度、頭の中に映像が浮かぶ


バシャン!


沙奈を川に突き落としている


みぃちゃん

どこだ

どこにいる


ナンチュン(天界での将棋や碁のようなもの)でもなんでもやろう

またドールハウス買うよ
安いやつなら

湯(タン)だってまた作ろう


喬一は まだ気付いていなかった。


美織がいかに危険で近づいてはいけない存在なのかを。


 

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