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アーロン王朝

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時はルーンミッドガッツ王朝の2つ前。


まだ世の中がずっと貧しかった、アーロン大帝の御世。


アーロンの母親は東洋系であった。

大変美しい女だったが、頭がとても悪かった。

子供を生むことで、自身の美貌が損なわれ、ボディラインがめちゃくちゃになると信じて疑わなかった。

毎夜毎夜、私の中には悪魔がいると身を震わせ、出産の際には、「早く私の中の悪魔を出して!」と喚いた。


アーロンは乳母に育てられ、アーロンの母親は男を作って逃げた。

すぐに捕まり、父親に処刑されたが。


「かあさま、最後に抱っこして」

最後にアーロンは母親に駆け寄って言った。


アーロンの母親は大粒の涙を流して、

「幸せになって。御免なさいね、こんなどうしようもない母親で」

とまるで冬の寒さに凍えるようにブルブル震えながらアーロンをきつく抱きしめた。


「かあさまはどうしようもない、なんて・・・そんなことないよ・・・」


幼い子が言うような台詞ではない言葉を吐いて、

アーロンは母親の処刑を見た。


父親に「皇帝になる者は見ておかねばならない」と無理矢理見せられたから。



アーロンは心を閉ざした暗い少年になった。

思い通りにならないとすぐに暴れる、そういう人間になった。


そんな時に現れたアイラン。


アイランは幼年学校で出会った少女である。


母親にそっくりの大きな愛らしい目。
気の強い性格。


アーロンには誰も逆らえなかったのでからかう者はいなかったが、
アーロンがアイランに心奪われているのは一目瞭然であった。


貧しい家の出であったので、正妃としては無理だが、妾にして将来娶りたい、、

まだ幼いくせにそんなませたことを考えていた。


誰もアーロンに逆らわないのに、
アーロンは臆病になった。


アイランに拒まれたらどうしよう。

やだ!そんなことあってたまるか!


勉強も、運動も、魔法も、弓術も、、何もかも

アーロンは頑張った。


この頑張りが後の「アーロン大帝」を作る基盤となった。



そのうち、アーロンは母親そっくりの美しい青年になった。


誰もが、氷のように冷たい目を持つこの人間を畏れ敬った。



だが、アイランはいとも簡単にアーロンを拒んだ。


どうやら「アーシェ」という恋人がいるらしい。


アーシェには何もかも勝っているのに!

オスライオンがメスに自分の力を誇示するように、アーロンは自分をアピールした。

貧しいこの世に、散々の金銀財宝を毎日アイランに届けさせた。


だが、、

愛に生きるなど、まだ発想自体ない時代に、「アイランは愛に生き」た。



アーシェ、、私を捨てるの?


大粒の涙を流したアイランを偶然見てしまった。

それを見て処刑前の母親を思い出したアーロン。



それでも許せなかった。


例えばお金が無いとか。

力がないとか。

家柄が悪いとか。


それなら納得出来る。


それなのに、アーロンは全部を水準以上こなしていたのだ。

一体、、どうして、、

どうして俺を拒む?


アーロンのプライドはめちゃくちゃになった。



俺は何故、、あの顔をした女にいつも拒まれるんだ!


鍛えに鍛えたそのこぶしで殴った壁は、母親に対してのものか、アイランに対してのものか。



愛が行き過ぎれば、憎しみは深くなる。


日の当たらない暗く冷たい海の底のように・・・

アーロンの憎しみは更に深くなってしまった。


「あいつを次の世で永遠の10歳の少女にしろ」

今はいなくなった神聖な職業である「パンテスト」。
その長に命令した。


次の世も、、

誰とも関われない、未熟な子供のままの女にしてやる。

男になど近づけさせるか。


「アーシェ」も「実の兄」にしろ。


永遠に結ばれることのない「血の繋がった兄妹」。


これで、あの女は思い知るだろう!!



しょうがないのだ。

どんなに言っても決してアーロンを受け入れないのだから。


こうするしかない。


母親に歪まされ、基盤が閉鎖で出来ている人間には、常識的な考えなど、出来ないのだ。



かあさま、幸せになってって言ったくせに!

悪魔なんだろう俺は!

悪魔ならどうして「幸せになって」なんて言ったんだ

こんなことになれば地界に行くのは決まっている


それが俺の運命だ!

そうやって俺の人生をめちゃくちゃにしやがって!



母親に対してである。

それなのに何故アイランに八つ当たりするのだろうか。


アーロンはもう、理性などという 誰もが持つものを、

子供の頃からすっかり壊されてしまったのだ。



処刑されたアイラン。
真紅の血が まるで飛び交う薔薇の花びらのようであった。


処刑されたアイランの遺体に、アーロンはすがって泣いた。

鼻水は垂れ、よだれは垂れ、、

その情けない姿は、、痛々しい姿は、
いつもの凛としたアーロン大帝の面影とは似ても似つかないものであった。


憎しみは深く、、埋もれたら二度と出て来れない雪のように、、

そんな憎しみを作ってしまった自分が悲しかった。

アーロンは憎しみをいくらでも行使出来る自分の権力を呪った。



逝去後、アーロンは地界に堕ち、アイランは永遠の10歳の少女となって生まれ変わった。


そしてアーシェはその銀髪のまま、クライヴとして生まれ変わった。

生まれてすぐに鳥にさらわれたのは、実の兄妹として生まれてもなお、引き裂かれる運命だったからとしか言いようがない。


しかしふたりは出会った。


運命という大きな波には、何人たりとも逆らえないからである。


 

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