現代ファンタジーのオンライン小説 - ものもの

たましひ・前編

参っちゃうわよ

まさかこんな大雪になるとは思わなかったから


車の中で亮子がハ〜ッと両手にあごに乗せながらため息をついた。


ピロロロッピロロロッ

運転席の亮輝の携帯が鳴る。


「え?亮さん?なんすかこんな時に。え?そりゃもう旅行ですよ旅行

え?亮子もいますよ。でもほら雪だから車、前に進まなくて」

ぺらぺら


亮子と亮輝。


高校時代からの付き合いで、

高校→大学→会社、とずっと一緒にいる仲だ。


「亮」が付くねお互い。

そんな小さなことで、、ふたりは何とはなしに付き合うことになった。


クリスマスの時期になって、いかにもカップルが行きそうなところは混むから

誰も来ないような寂れたところの温泉街、、温泉街ならクリスマスでも混みそうなものだが、そこでも更にマイナーそうなところを探して、ここ医鷲岳に来たのだ。

亮子「ここにはね、ちょっとした思い出があるの

小さい頃なんだけどね」

嬉しそうに言っていた亮子・・・。


ふぅ

降り続く大雪。

渋滞。


・・・「みんな、同じこと考えてたのね」

亮子がため息をつく。


ちっとも進まない車。

このままだったら自転車でこいで行った方が絶対に早いに違いない。


「おかしいよね。医鷲岳がこんなに人気あるなんて」

「隠れた名スポットってやつとか?」亮輝が言う。

「そう・・・だったのかな」


・・・

しかし全く進まない。


どこかのパーキングエリアに停めて、そこで寝ちゃおうか。
旅館には着きそうにないから連絡して・・・

亮子が提案する。


ふあぁぁぁ

亮輝が豪快な欠伸をする。



不浄な、、悪い気って不浄なところに集まるって言うわ。

あたしすぐにお風呂入ってくる!!

ここはラブホテル「いわしーぬ」。
パーキングエリアで寝ようなんて言っておきながらベッドで寝たい!というのは

お馴染みの女のわがままだ。


進まないね〜 とうんっざりしながら待っていたら、コンコンッと車を叩かれた、
一時間前。


は、はい? と慌てて亮子は窓を開けて、、世にもキレイな女がいたのを確認した。

驚く間もなくムカーッ!とする女心。

女性は「何か食べ物、、食べ物を下さいませんか」と言っていた。

食べ物、、食べかけの肉まんがあったのを思い出す。

女性は何度もペコペコ頭を下げて去って行った。


可っ愛い〜子だよなぁ

マンガみたいなニコニコ顔で亮輝が言った。


真っ青な顔をしながら、「だ、、暖房もっと上げられない?」とエアコンの機能をカチャカチャいじる亮子。



いつもはやきもち妬きで「そんなに可愛い子なの?だったらあの子と結婚すればいいじゃない!」
と極めて頭の悪い発言をする亮子が何の反応もしない。



ジャー

先程の面白い?反応を思い出しながら亮輝はシャワーの音を聞いていた。


「お祖父ちゃん・・・」

何かそんなようなことを言ってた気がする。

「テレビでも観るかな」

独り言をつぶやいて、亮輝はテレビをつけた。


ザー

一面の砂嵐。


チャンネルを変えるけど、どこもかしこも砂嵐のままだった。


ちっ テレビくらい直しとけ!!

フロントに電話して「申し訳ありません」と料金無し処置に持っていけないかなーなんて思っていたその時、

コンッコンッ

え?


コンッコンッコンッ!

さっきより大きめの音でドアがノックされる。

「丁度良い!テレビの苦情もあるし、、」そう思ってドアに走る。

ガチャッ



先程の女が、、亮輝が「可愛い子だよな〜」と言っていたあの白い女が銃口を向けて立っている。


思わず両手の平をパッと前に出し、後ずさりした。

キラリ

銃口が光る。


な、なに?え?なんで?

なんでこんなところに?、と言いたかったが言葉が出ない。

なん、、何のつもりだ!

やっと言葉が出た時にはぐおっ!と銃を奪おうとしていた。


亮輝、どうしたの?

騒ぎを聞きつけたのだろう。
亮子がバスタオルを巻いてバスルームから出てきた。


あ、りょう、、亮輝が亮子に振り返った。

タタタ 亮輝?


亮輝が振り返った瞬間、てぃららてぃらてぃらら〜♪ 廊下に流れているゴッドファーザーのテーマソングが流れている 誰もいない廊下だけがあった。


「・・・そう」

「・・・?」


事情を説明した亮輝。

「ばっかじゃないのー あははは」なんて笑うキャラの亮子がバカにしない。

なんだか顔が青いままだ。「(風呂入ったのに・・・)」(普通お風呂に入ったら上気するはず)


こんな最悪の気分のまま、お風呂に入れない・・・が
「悪い気は不浄なものに集まる」という先程の亮子の言葉を思い出した。

入りたくない、このまま寝たい、、早く逃げ出したい、、

首を左右に倒してポキッポキッと鳴らして、、ふぅ〜〜 ため息をついてバスルームのドアを開けた。

バスタブからあの不気味な白い顔が出そうで気味が悪かった。

「(ここで恐がったりしたら亮子に後でどんなにからかわれるか!)」


・・・ふざけている場合ではない。

何故あの突然渋滞の中で声を掛けてきた女が、ここにいたんだ。

「(んで、何で(どうせおもちゃなんだろうけど)銃なんて持ってたんだ)」


振り返った時にいなくなっていたのは、、急いで隣の部屋とかに駆け込んだとかなんだろうけれど、、


キャーッ!!


悲鳴が聞こえた。

亮子だ。

丁度上がろうとしていたところである。

バサバサバサッとタオルで体を拭いて、(急げよ!)備え付けの浴衣を着る。(急げって!)


亮子がテレビの前で倒れていた。


「亮子!亮子しっかりしろ!」


亮輝は揺さぶった。


亮子!!


テレビに、、女の顔が薄暗く映っている。

あの女だ。白い顔の。


亮輝「なんの真似だ」

テレビの女に言った。

もちろん、思いっきし強がりである。
超ガタガタ震えながら言った。


女はとても悲しそうだった。

「ずっと見てたのに・・・」
「声も掛けたのに・・・」


亮子「あの子・・・お祖父ちゃん・・・」

起きているのか夢うつつなのか。
亮子がつぶやいている。

「子」?「お祖父ちゃん?」

ふたつの矛盾した言葉にさっぱり訳が分からなくなる亮輝だったが、それどころではない。


再度テレビを見た。

ザー 砂嵐になっていた。



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