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兄と弟

忠親(ただちか)は兄の宗長(むねなが)のことが心配であった。

毎晩毎晩うなされているし、いつも疲れた顔をしてフラフラしている。


「(義姉君が亡くなられたからと思っていたが)」


そういう感じではない。


何かから逃げている感じがする。


・・・兄上。


忠親はただただ、その様子を見ているしかなかった。


宗長は結構最近、妻を亡くした。

忠親にとっては「義姉」である。


いつも、、仲が良さそうに見えた。


ただ


「(義姉君が気が強かった気がする)」


何かと言うと夫を立てず、莫迦にばかりするのだ。

周りからすると からかっているとか 戯れているように だとか

そういう風に映っていたのだが。


「(兄上・・・)」


忠親は また うなされている兄の部屋に行った。


うぅ〜

うううぅ〜

うう"〜〜っ!


聞いているこっちまで苦しくなってくる、、思わず眉をひそめてしまうほどのうなり。


兄上


最初は小さく。


だが、「兄上」


揺さぶった。



起きる宗長。

「忠親、、なんだ。どうしたのだ」

汗をぬぐう


忠親「・・・・・・」


宗長「用事でも・・・あるのか」


兄上

「夢をご覧になられたのですか」


宗長「い、 い、いや 何も」


忠親「どうなさったのです。そんなに汗をおかきになって」


い、いや 大丈夫だ


振りほどき、しばしふたりは見詰め合った。


兄上

「何にうなされておいでなのです」


何のことじゃ

わしはよう知らん。

「訳の分からんことを申すのはよせ」


・・・


忠親は去った。


足音を全く立てない歩き方。


「(いつも通りの奴だ。我が弟ながら、気味の悪う)」


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義姉君は 亡くなった訳ではない。

殺されたのだ。

川に身を投げたということになっているが、


忠親「(義姉君の体に切り傷があった)」


まず自身を刺し、それから身を投げた・・・


違う。

「(背中にあった)」


・・・



面倒なことには足を踏み入れず、知らない振りをするのが良いのだろう。


・・・が


兄上。

私は。


忠親は兄を呼んだ。


あの 川に。


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宗長「忠親、おまえは何が言いたいのじゃ」

忠親「兄上、わたくしは口惜しいのです」


宗長「どういう意味だ」


月が妖しく輝いている。

草の露がぽとり、、と落ちる。


忠親「兄上、、私は本当は」



本当は


義姉君を、、この手で、、っ 

そう決心して、

冷たい風の中を、、寒さをこらえながら待っておりました。

あの晩です。



しかし



「・・・」



宗長「何が。言いたいのじゃ」



兄上、わたくしが言いたいのは

義姉君を殺したのは貴方様で御座います。


わたくしでしたら良かったのに。


宗長「・・・何を言っているのか分からぬ

戯れ言はよせ」



わたくしでない以上、貴方様が裁かれるべきで御座います。


貴方の代わりにと思うておりましたが、
これは見過ごす訳には参りませぬ。


宗長「知らぬと申しておる」


兄上。

罪をお認めにならないと言われるのですね。


おまえの戯れ言に付き合っている暇などない!


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奥方様の後を追うなんて。

今時何て奥様想いの御方なのでしょう。

夫の鑑で御座いますこと。


それにしても悲しいことですね。

無常がもたらした悲劇なので御座いましょうか。


どのような事情であれ、本人たちにしか分からぬことじゃ




「(全部、カマをかけてみただけさ)」

「(本当に俺が寒い中を待っているとでも思ったか)」

「(元々おまえが気に食わなかったんだよ)」

「(どうやって殺してやろうかと思ったら)」


義姉が殺されてて


それを


「(利用してやったんだよ)」


弟が、兄思いを装って、、兄貴はすっかり油断した。

警戒心もすっかり抜けてて


そこをパクッとな


くっ

くはははははは


これで俺の天下だ。

兄だからって俺を見くびっていた罰だと思うんだな


さらばだ兄上。



ふっ



美しい顔をくるっと後ろに向けて、いつも通り足音を立てずに去っていく忠親だった。


 

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