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幽々多難・後編

ストゥニー住み処。

森の中の大きな娯楽施設である。

「樹原義之」と「霧谷りい」。

高校時代の同級生同士である。

現在。30代。


ふたりは月に一度上映される映画、或いはミュージカルを観に、
ここストゥニー住み処に来る。

そこで適当に話したりする、のが通例となっていた。


リイは幽霊だった。
それを隠して義之と会っている。

(※「りい」は文章がよみにくくなってしまうので「リイ」で統一しています)

・・・

何となく、分かっていた。
義之がリイのことを好きなことを・・・。


「(こういう人は、多分何かあった時、精神的に、、って思って)」

余計な心配をするリイである。


下を向くリイ。

「(こんなことずっと続けてもう2年か。2年も私、キィ君のこと騙してるのね・・・)」

ズキッ

幽体なのに心が痛む。


だが、リイは義之の気持ちに応えられない。

応えられない。

生きていても、、そうでなくても・・・


「女性が好きなの。男の子には、、男の子には興味ないの・・・」

どうしようもないわ


リイの旦那は、

「あ、俺そういうの全然気にしないからv」

という陽気なタイプで、リイの全てを許容していた。
(へんなふうふ〜)


勿論現在は・・・「男やもめ」なのではあるが・・・



義之は或る日、大変勇気の要る台詞を言った。

相当、勇気を出していたっぽい雰囲気が漂っていた。


「・・・わ、私はキィ君の遺伝子を汚しちゃうかも、、」

慌てて言うリイだ。

「俺の遺伝子を残す女はおまえだけだ。

言ったからな!」


リイ「(・・・日本昔ばなしみたいに、子供に幽霊が飴を与えて育てるみたくなるの?

・・・じゃなくて。

・・・)」

沈黙が漂う。


どうしていいか分からないリイの顔を見て、ものすごくショックを受ける義之。

相当勇気を振り絞ったのだろう。


あまりのショック顔に、「あっ、あ"あ"ぁあぁぁぁ」と思ったリイ。

・・・

引かれるのを覚悟で全部言った。

何もかも・・・


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ここは樹原家。

居間で、義之はお茶(梅こぶ茶)を飲みながらうなだれていた。


「俺は、『既婚者だから無理』って言われると思った」

ハッ!

「そ、そういうのもあった、、わね

っていうか一番最初に気付くべきものなのに ・・・私ったら」


泣くなんて絶対に有り得ないキャラの義之がボタボタ滝のような涙を流す。

ずっとティッシュで拭き、鼻をかみ、 ずっとずっとそれを繰り返していた。


ひとしきり泣き、落ち着いた頃。

幽霊でも異性愛者じゃなくても既婚者でも(略)と言った。

リイは呆然とした。

え、えっと。

あのっ、、

「分かっていたの。そういうの。大きな力っていうか。だからどうしても現世に留まるしかなくて。。
あまりに大きいものだったから。

キィ君。どうしてどうして、、どうしてそんなに私のこと好きなの?」

「俺のこと、、すごく買ってくれていたから」


・・・

誰も買ってたよ・・・

「(逆に買わなかった人なんて、、クラスにいたっけ?)」

先生も含めて。

・・・

「遺伝子なんてもうどうでもいい」

リイ

強い口調。

何もいえないリイ。


義之は壁を思いっきし殴った。

壁は凹んだ・・・

(ひどいよ。。壁に罪はねーよ!!)


うっ(泣き声)

「幽霊でもいぃい"ぃいぃいい。いいんだ!」

・・・


・・・・・・

キィ君がかなり変な、、みっともない(←ひどい)こと言ってる!

凍り付いてピシーンッ!となるリイ。


義之はずっとこのまま現世にいてくれ的なことを言う。

がん!

ええ"ぇえぇぇ?


な、何年も留まっている霊もいるけど、、

私は

「私、上に上がりたいよ・・・」少し泣きそうなリイ。

(上に上がる=成仏する)


で。すっごいことが起こった。


「(なっなっなぁっなにぃいぃ、、な、、なぁっ、、)」


男の力で思いっきし(手加減なく)往復ビンタをかましたのだ。

義之がリイに。

そこにもし人がいたら「やめでぇぇぇっ!」と言って止めるか、血の気が引いてへたり込んでしまうか、、気の弱い女性なら泣き出してしまっただろう。

義之は心から憎いみたいな鬼のような形相をして息も切らさず睨んでいる。


鼻血だらけでおたふくみたいなをして、、腰を抜かして、あわわわわっとするリイ。

すごく泣きたくてぐっと歯と歯を合わせた。
でも恐怖が上回った。(当然だ・・・)

「(に、逃げなきゃ。あ、脚が。逃げたら余計、、ど、どうしよう 誰か!)」


超ぶっとんだことをしたくせに、冷静に言う義之。

「・・・お、女に手を上げるなんて」

両手を見つめている。


落ち着いた声で言う。(まず謝れと・・・)

亡くなっているのだから、戸籍はない。
=ならば、リイは既婚者ではない。

(略!)


リイはふらふらだ。

「私は、キィ君ちょっと待って。私は、1、幽霊 2、異性愛者ではない なのよ?」

リイは泣きそうだったが、疲れてもうどうでもいいやみたいな気持ちになった。

心なしか、義之が格好良く見えてきた。
(心を守るための体の働き?幽霊でも発動するのか?)


幽霊は基本的に体力がない。

個人差はあるらしいのだがショックなことがあると気を失い掛けてしまう。

・・・

ドサッ

ショックの余り脳内エンドルフィンが麻薬並みに出てしまったのだろう。

登山で遭難して亡くなった人のような幸せそうな顔でパタン・・・と倒れてしまうリイ。

ラッキー!と思ってリイを抱き上げ、すりすりする義之。
(ぬいぐるみか?)



★怖いのはもう霧散した。あんなことしてまで現世に留まって欲しいと願う義之の願いを反故にしたらあまりに気の毒だ

★冷静で極めて頭の良い義之をショックの渦に巻き込んだら、きっと地球に異変が起こる

★暴力なんて絶対にするタイプではない義之があんなに追い詰められるほどリイが好きなら、(好きっていうより本当に(略)なレベル)離れたら義之自体人生終了するだろう


そういう訳で、すっかりリイは自分の人生やその後の自分の流れ、成仏・・・その後の新たなる道を諦めた。

行くとしたら義之と一緒だろう。

「(この人、本当は駄々っ子よ!)」

リイは本当は呆れて呆れてしょうがなかったが、母親のような気分になっていた。
(ならざるを得ないだろう・・・汗)


もうひとつ、重要な問題があったが、それはご想像にお任せしよう 汗。。


義之はこんな危険人物ではない。

人を殴ったことも、ものに当たったことも、、
生まれてから一度もない。

というより、(リイに対して以外は)もう人に対して、なんて一生ないだろう。

本当に、、本当なのだ。
本当に危険な人間では決してない。
ブリンガー(表に出ていないだけで秘めている人)でも、ない。

単純にリイを好きになってしまったのだ。すごく。

ふつーは相手の気持ちを考えるのに。
考える余裕もない程(略)

物質の世界でも有り得ないところで化学反応が起こるように、人間界で化学反応が起こったとしか言い様のない、、事象だ。


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この話は「人間界の化学反応」のお話である。

全てが全て、ある法則の元に動いているとは、、限らない。


 

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