現代ファンタジーのオンライン小説 - ものもの

心の中で。前編

面倒臭ぇ!そういうことか


夏彦はうんざりだった。

・・・

縁側で、、座って壁によっかかって遠くを見つめる清子(さやこ)。


「(俺はマイナス100点か100点しか取れないんだ。

俺は無理だな!)」


マッハの勢いで二階にドドドドドッと逃げていく夏彦。


最初は、

悲しそうな青い顔した清子を「失恋したのか?」と思って心配していた。


勿論、家族も「失恋したんだろう・・・」と思っているだろう。


部屋で、両手で顔を覆う。「(どうしてこうも、、俺は何ていうか

砂金、、砂漠の砂の中で偶然金を掴んじまうんだろう)」


夏彦は「そこのシナプス(脳内伝達物質)でも入ってるんじゃないか?」というくらいの自分の察しの良さを呪った。


「(俺は関係ない・・・ 確かに兄貴だけど

兄貴だけど 関係ない。自分で何とかしろ清子!)」


何かに逃げる夏彦。


夏彦。

東條夏彦。


彼は稀に見る、典型的な「極端男児」である。


嫌だと思ったもの出来ないもの無理なものには「一切手を出さない」

零点どころか マイナス満点を取ってしまうからだ。

(援軍として行ってみたら、味方の軍を全滅させた上に住人たちも全員天国に送り、
挙句 敵軍の士気を偶然高めさせ、敵軍のエネルギーを最小限に留まらせたまま 勝たせる、つまり味方軍を完全崩壊させる、

・・・みたいな感じ)


だが、「これ!」と決めたもの

絶対に逃げられない、勝て!というもの

自分で選んだ「これをやる」というもの
そういうものは

(略)


全戦全勝、ではないのだ。

全戦全満勝、なのである。


「MIT行け!」

と言われ、命が脅されていたり「行こうかな」と思ったりしたら

アッサリ行くだろう。

MIT=マサチューセッツ工科大学
説明は略。


そこで首席で卒業しろ!

とか命令されて、「絶体絶命の状況」に追い込まれたら

覚悟を決めて 結局首席の椅子にふ〜っと座るだろう。



夏彦は「極端」なのである。

0か100か じゃないのだ。

-100か100なのである。

100のところは(略)


こういう、極端な人間は主に男性が多い。

ゆえに「極端男児」と呼ぶ。



俺が関わったらマイナス100点取っちまう

「(てめぇのケツはてめぇで拭け!)」


清子を完全に見捨てる夏彦。

(まだ頼られてないのに)


ふと思い出す、あの日の清子。


バンッ!

机に両脚を投げ出し、クロスして

マガジンだかサンデー?を読んでいた。

のを、

「お兄ちゃん!あのね!」と突然部屋に入ってきて、嬉しそうにしていた清子。


彼女の話はこうだ。

★私はサソリ座なのがコンプレックスだった。
★理由は美川憲一が略
★でもそんなサソリ座でも


相性が良いのがお兄ちゃんなの!


★夏彦はカニ座だ
★サソリ座はカニ座と相性が良い


話をしなくても

「心の中で会話、、出来るんだって」


少し赤くなって両手の人差し指を合わせて 下を向く清子。

「1日、、違ってたらフタゴになってたけど」


赤くなる妹にそっけない兄。


何言ってるの!

バッと顔を上げて主張する。

「その日に生まれたから今の「東條夏彦」がいるのよ!

1日でも違っていたら、別の命だったのよ!」


・・・

哲学的な台詞だな。

少し考えて夏彦は思った。


別の命・・・だろうか。

母親のお腹から出る日にちが変わるだけで同じでは。


「次の日とかだったら何かの事情で亡くなっていたかも。何かの事情で逆に脳に良いものがいっぱい入って性格が違っていたかも

1日遅れても 早まっても」


うんざりした夏彦。


「おまえと相性悪い、、かどうか分からないけど

フタゴ座の方に生まれたかったよ」

(冷たいなぁ・・・)


すごくショックな顔をして ごめんね。 それだけを言って部屋を出て行く清子。


さすがに罪悪感を感じて、少し経ってから謝りに行くが、
気にしてないからの一点張りで、清子は完全に心を閉じてしまった。


星座に興味無かったから
何言って良いか分からなくて
別に悪気があって言った訳じゃ
占いとかそういう女の話とか嫌いで
っていうか悪かったよ!

べらべらべら!


何を言っても何を説明しても何を良い訳にしても、

「気にしないで」とニコッと笑う清子。


怒っている感じは一切感じない。

単純にもう「心がピッタリと閉じてしまった」感じである。


夏彦はとにかく口が悪いのだ。

無駄なエネルギーを使うと例のマイナス100点を取ってしまうので
自分の身を守るために付けた知恵なのかもしれない。


口の悪さで人とのトラブルは絶えない。


しかし彼は神がかり的に勘が鋭い。冒頭にもあるが・・・


「この人に無礼な口を聞いてはいけない!」

とか

「この人はやばい。口悪いのを抑えよう。っていうか下に出ないと」

という勘の鋭さというか、、そういうのは「巫女」とか「シャーマン」とか

そういうレベルに近い。


(ど、どういう人だ)


だから、「本当に無礼な口を聞いてはいけない人」には口を悪くしないので

被害は最小限で収まってはいる。


・・・

ずっと、気にしていた、あの日の出来事。

寂しそうに去って行った あの日の清子。


話をしなくても

心の中で会話、、出来るんだって


そんなこと言ってたな


それは 感じたことあるよ

たくさん・・・


「(兄妹だからだと思ってたけど?)」


話をしなくても

心の中で会話、、出来るんだって


それは・・・
何度も

何度も感じていたことだ。


何故か話をしなくても

お互い

濃ゆい何かがあって、


当たり前のように・・・



良く分からないけど

そこら辺の相性はあるのかもな


辛くてしょうがなかった時

隠していた。

誰も、、お袋も親父も気付いてなかった。


清子だけ、分かってるよ って顔してた


『大丈夫よ お兄ちゃん』

ニコッと笑って何か 何か見守ってくれてるような

そんな感じの。

空間出してた。


分かってたから

「(どうせこいつにはバレる)」

って。

嬉しかったのを覚えてるんだ。


部屋で んーっと思いにふけり

諦めたように立ち上がった。


「面倒臭ぇぇな!」

物凄い怒りは湧くが、もうしょうがない。100点取るしかない。と覚悟を決めた。



同時に

コンコンッ

・・・

「(そらきた!)」

分かっている人が部屋のドアをノックした。



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