現代ファンタジーのオンライン小説 - ものもの

加矢と五郎

少女の名前は加矢(かや)と言った。
正式名称、加矢姫。

彼女はいつも、許婚の五郎の愛に飢えていた。

野を駆けずり回りに花を摘んで、それを誰かにあげている。
「(誰かは察しがついているわ)」

いつも相手にされてないくせに

それでもめげないのね・・・

加矢は、寂しかった。

私もあんな風に愛されたい。
でも

そんなこと言ったら 愛されない

ずっと傍観者なのかな。私。

加矢は

一番最初に 五郎と対面した時から ずっとずっと
五郎のことが好きだった。

「(驚いて、後ずさりしてたあの感じが)」
心に残ってたのよね

無防備に驚いていて。

そこを開いたらびよーんって人形が出てくる仕掛けを作っておいた。
それをたまたま五郎が開けて、びよーん、ですごくびっくりした顔してた。

「(何であれが忘れられないのだろう)」

(ほんとだよ)

五郎は今日も、ある人に花を届けに野山を駆け回る。

ぐすっ

涙を拭く。

何か言えば きっと嫌われる。

だから何も言えない。

ぐすっぐすっ


涙で濡れすぎて、しゃがみこんで いけねぇいけねぇ とトントン、と着物で涙をそっと拭いた。

トントン
誰かが肩を叩く。

え?振り向く加矢。

そこには五郎の姿。

後ずさりする加矢。

「な、なんで」

ここに

「な、泣いてるの?」
どうして

五郎は驚いている。


あなたが構ってくれないからよ!

こういう時、何の迷いもなく言ってしまう加矢。
我慢してこうなる。


かま、、
「何でそれを言わないの?」
すごく不思議そうに聞く五郎。

下を向く加矢。


ほら

彼の片手にはたくさんの花々があった。

・・・

じーっと見つめる加矢。

「どう?」
少し照れたように言う五郎。

どう、って

見つくろって欲しい訳?
ムッとする

「あの人にまた渡すの?」

こんなこと、普段絶対に言わない。
何で言っちゃうの私。
加矢はムカついた。自分に。

「違うよ」
加矢のその様子に少し嬉しそうに?言う五郎。

「君への贈り物」

え?

花じゃなく、五郎を見る。

嬉しそうな顔をする五郎。

子供みたい。
いつもの格好良い、大人の顔したあの五郎じゃなくて。

あ、有難う。
そっと花たちを受け取る。


君さ

母上にずっと妬いてたの?

ぎっくーん!
変なところをいきなり突かれる。


そうだ。

五郎がいつも花を渡していた相手は笹中御前という、五郎の母親だった。

い、いつも相手にされないくせに、よくまぁあんなに

それ以上は言えなかった。

「母上は 何故か私に冷たいのだ」

何故だか分からない
いや、単純に父上の子供を産まなければと仕方なく私を産んで、、

だから 元々私を産みたくて産んだのではないのだ

分かってはいるんだが

母上はお美しいから、花が似合うと思って。

ムッとする加矢。

わたくしは美しくないから は、花など似合いませんわ
プイッと顔を背ける。

・・・

沈黙の後、、、「おまえは美しいよ」
五郎は寂しそうに言った。

自信を失わせてしまってすまないな

加矢は五郎の方に向き直った。

・・・

今まで、

ずっと

私は、、自分のことばっかり考えてた。

「構ってくれない!」って怒ってた。

「(この人はこの人なりの苦悩があったのに)」

『おまえは美しいよ』

それだけで充分。


ごめんなさい五郎。

加矢は 手渡された花々を見つめ、「有難う」ともう一度言い、

「かえろっか」
ニッコリ笑って五郎に提案した。


 

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