現代ファンタジーのオンライン小説 - ものもの

変わる

着信音が鳴るとビクッとする。

表示には「永井優奈」と表示されている。

ホッ、、として応答ボタンを押す。




・・・

あれから夜が来るのが 恐い。

音楽、お気に入りのを掛けて聞こえなく、、とも思ったが、

親友である優奈からの着信にも気付かない可能性がある。


・・・あの音。

個別に、分かるように着信の音を変えることは出来る、、はずではあるが。

・・・

「(面倒臭い!)」


バクバク鳴る心臓。


何度目かのコール音の後、音が止む。



厭な感覚がじわじわと心を浸食していく。

・・・

鳴らないような設定にすることも出来る。

でも。絶対しない。


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優奈「へー。今更虫のいい話だね」

うん。

いつもは元気な声を出せる租子。


優奈「そうこ・・・」


「粗末なという意味で使われる『租』」

「私の名前は「租子」 お母さんが付けた」


面倒臭かったんでしょうね。

男の子が欲しいって言ってたから。

プラス

・・・女を憎んでいるっていうか。
女を全部ライバル視してるから、
娘もライバルなのよ

「だから、『粗末』って付けてとりあえず自分より上にならないようにって

・・・名前決める頃からライバル視して『いい気になっちゃ駄目』って・・・
えぇと、、」

優菜「わかるよー。え、でもそれってさ。おかしくない?
実の娘でしょ?
でも、アメリカだったかな。そういう話聞いたことあるけど」


娘を、実の娘を完全にライバル視し、夫が可愛がるのも嫌がり、娘の幸せをことごとく潰し、娘よりも上に立とうとし
結果娘を・・・

・・・

優菜「気持ちは分からんでもないのよ。
まぁ自分はこれから老いていく訳だし?
娘はこれから、っていうのがあるし。

でもそれって明らかに病気というか。

一回病院に診てもらった方が」

・・・

面倒臭い。

何度この台詞を色んな人に言われてきたことか。

「あっ」
聡明な優奈は見抜いた。

そっか・・・
そもそも病院に素直に、、って言ったら上からだけど、、
行くような人じゃ。ないのか。

「(その通り!)」


★「そっか・・・やっぱり自分のお母さんが病院に行くってなるとイヤってのがあるのね。
自分のお母さんだもんね。
やだっ、やっぱりお母さんが好きなんじゃない」

★「病院に行くのに抵抗があるの?そんなこと言ってる場合じゃないでしょー。
あなたが行く訳じゃないんだよ?それとも何。身内でそういう人がいるとイヤな訳?
ひどいなぁ」

診てもらった方がいい→どうせ分かってもらえないと『沈黙』した時の周囲の反応。


診てもらった方がいい、なんて言ったらどうなるか。

「あたしが○ちが○だって言いたいの!」とがなり立てるのは分かっている。

そして散々、嫌がらせをしてくるのだ。
ものを壊したり、本を破いたり。服を捨てたり。


がやがや

そこはファミリーレストランだったのだが、親子連れが多かった。

「こうして見ると、全然普通の親多いのにね」

租子「うん。優しそうだよね」

優奈「でも、家に帰るとひどいとか」

租子「・・・いや〜、、そういう風にも見えない
そういう人って分かると思うんだ」

優奈「どうだろうね」


優奈は「超」が付くインテリだ。

元々頭が良かったというよりは、必死の「努力」でのし上がっていったと言える。

「お母さん、高卒だから、そういうのイヤミ言うのよね」

会う度にしょんぼり言う優奈。


絶対にいい大学に行かせる!と頑張って子供を育ててきたという優奈の母親。

妹もいるのだが、姉妹ともに母親の願い通りに超難関大学に入学した。


それなのに、娘をそういう風に・・・というのは矛盾がある。

優奈「私、自分の人生の幸せのために勉強頑張ってきたんじゃない。
お母さんの喜ぶ顔が見たくて勉強してきたのに」

大学合格後、少し経ってから言っていた。


「ねーママー!ステーキとハンバーグの違いってなんなのー?」

遠くから子供の声が聞こえる。

ママと思われる人「えー牛肉そのものを焼いたのと、、」

子供「わかんないー!」

ママ「えーっと、、お姉さんがステーキで、妹がハンバーグよ」

子供「じゃああたしステーキなんだぁ」

ママ「あー、えーっと。ハンバーグでもあるかな?ひとりっこだからね」

子供「わー飛車角両取り!」


・・・

固まる


優奈「ステーキとハンバーグの違いが分からないのに最後のあれって・・・」

租子「飛車角、、博識な子なのね」


ふと見ると天使のような可愛い子だ。

「ジョンベネ・ラムジーちゃんの和風版ね」

(懐かしい)


可愛くて頭が良くて、明るくて。でも少し抜けてて。


・・・

娘にも、焼き餅妬いてしまう母親の気持ちは分からないでもない。

逆に自分が 不美人で頭が悪くて、暗くて。隙も無くて・・・
とかだったら

理性で何とか出来ても本能の部分はどうなるか分からない。

子供は鋭いから、「可愛がってくれてるけど、ホントはあたしのこと憎んでるんでしょ・・・」
とすぐに勘付き、母親に気に入られようと、みすぼらしい自分をせっせと作るに違いない。

だって母親の笑顔の方が、自分よりも・・・自分の全てよりも大切だから。


見てこれ!

「30cmパフェだって。一緒に食べない?」

優奈が珍しそうに注文表を見ている。

そ、それは。

「軽井沢にあったみたいだねぇ。30cmパフェ」


優奈「あ、で、あ。何だっけ。

御免」

我に返る優奈。


主題を言う。

・・・

租子「あ、何だっけ。・・・あ、そう。毎晩電話掛けてくるの。もう怖くって。
その時間だけどうにかなりそう」


優奈「着信拒否しなよ!」


着信拒否リストに入れるのが汚らわしいわ。

・・・


何かこだわっていたりしたら、

というか期待していたら、

「(何かするような気がする)」

感情を込めて、着信拒否したり、音とか何かの設定をするだろう。


租子

「そこ」


優奈は「そうこ」と呼んでくれている。


名前はあまりに変わった名前なら、家庭裁判所からの申請が下りて名前が変更出来る。

もちろん変更予定だ。


着信音がずっと鳴り響いてじわじわっとイヤな感情が胸の中で広がって行って・・・


それが多分、
残念ながら「租子」である証なんだろう、な。


租子じゃなくなったら

租子だった時代のことも少しは忘れられるだろうな。


「それも含めて自分じゃないの!」
なんていう意見もあるだろうが、「捨てなければいけないもの」は人生にいくつも出てくる。

「(時には自分を捨てることも必要なのよ)」


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「良い名前、考えてね!
凄っく良い。豪華〜な凄くいいやつ!30cmパフェおごるから!」

ニッコリ笑いながら優奈に言う租子。


えー?あたしが?マジで?
えー? 

優奈は驚いた。


「ん〜・・・でもさ。あたし「租子」好きだよ?」

パフェ食いてぇ〜〜という顔をしながら優奈は微笑んだ。


 

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