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おじいさんとハスキー犬

昔々、喜怒哀楽のないおじいさんがいました。

 

ペットショップに行って、「猫」を飼おうとしたのですが、猫は全部売り切れていました。

そこに、いかにも弱そうな小さなメスのシベリアンハスキーがいました。

おじいさん は、シベリアンハスキーは怖い顔しているのに、その顔をしても弱そうだなんて・・・と

そのシベリアンハスキーに興味を持ちました。

 

そのシベリアンハスキーは実は、飼われても飼われても、ペットショップに戻ってきてしまう問題児(問題犬)でした。

ですが、何故かこのおじいさんの元からは離れませんでした。

そのうち、シベリアンハスキーは段々と男らしくなっていきました。

顔も、いかにも怖そうな顔「以上」になっていきました。

 

シベリアンハスキーは、おじいさんがすごく困ってて

すごく他のことにはちょっと今は色々出来ない!

そういうタイミングを見計らって、脱走しました。

 

おじいさんはへとへとになってシベリアンハスキーを探すのですが、

おじいさんが足腰に支障が出るくらいを見計らって、

シベリアンハスキーは帰ってきました。

 

おじいさんは、シベリアンハスキーは帰巣本能が弱いって言われているから・・・

だから心配してたんだよ、、良かった、、と思いました。

シベリアンハスキーは、

その私がわざわざ帰ってきてやったのよ、感謝しなさい、と思うのでした。

 

そのうち、困ったことが起きました。

脱走を繰り返すうちに、シベリアンハスキーはドS気質のある人間に気に入られてしまったのです。

そして首輪をつけられ、飼われてしまいました。

そう、今までのように、おじいさんのもとに帰ることが出来なくなってしまったのです。

 

それだけならまだいい(?)のですが、

このシベリアンハスキーは超のつくドMでもあったのです。

 

この飼い主は愛情表現が下手なだけで、本当は深い愛情の持ち主でした。

シベリアンハスキーは段々、おじいさんを忘れていきました。

この、ドSの仮面を被った仮の飼い主を愛するようになって・・・

いや、憐れむようになっていったのです。

 

心の奥底ではおじいさんへの愛はずっとロウソクの火のように、いつまでもいつまでも

弱いものになったとはいえ、消えてはいませんでした。

 

そして、とうとう、そのドSな飼い主は、シベリアンハスキーの首輪をはずしました。

「俺を憐れむような畜生なんて要らない!何処へでも消え失せろ」

 

ドSの飼い主は、シベリアンハスキーが「本当の飼い主」の元に帰りたがっている、

俺の小さな所有欲でこの子(シベリアンハスキー)の人生(犬生)を台無しにしちゃいけない、

そう思えるようになったのです。

だから泣きながら首輪をはずしました。

 

シベリアンハスキーは、この人のために自分を犠牲にしてもいいとさえ思いました。

こんなに想ってくれるのなら、この人のために生きたい

そう思ったのです。

 

それなのに、おじいさんへの想いが勝ってしまうのです。

 

シベリアンハスキーは自分の無力さに心の底からいらだちながらも、

真っ先におじいさんの元へと急ぎました。

 

そこまで走ったら転んでしまうくらい、たくさん、たくさん、走りました。

 

早く帰りたい

早く帰りたい

もしもこれが人間なら、

泣きながら走っているのでしょう。

 

何故、脱走なんてしていたのでしょう?

 

それはこっちを見て欲しいからでした。

 

おじいさんは喜怒哀楽がなくていつも自分に興味がないように感じていたので、

興味を持って欲しくて、脱走を繰り返していました。

 

また脱走するけど、でもまた会いたいよ!

 

シベリアンハスキーは懐かしい家に、、

 

着く前に、、おじいさんと数年振りに再会しました。

 

おじいさんはずっとずっと・・・

 

何年経っても、ずっとシベリアンハスキーを探していたのでした。

生きている状態じゃなくてもいい
骨だけでもいい

それまでは生きていなければ・・・


おじいさんはやはり喜怒哀楽のない眼で、、

シベリアンハスキーを見つめていました。

 

ひとりと一匹はかたく抱きしめ合いました。


 

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