現代ファンタジーのオンライン小説 - ものもの

良い人

ここは山の手中学。
「良い人」だったはずのタケルが、「何かを気付いた同級生・トモコ」にゆらりと近付いていった。

「良い人の振りをするのは大変だったよ。クックック」
と、言いながら・・・。


「た、タケル、、って変よね!」

自分を奮い立たせるために超でかい声で言った。
(人を呼ぶ目的もあった)

「変な人だな。ククク。人に迷惑を掛けないように誰も来ないところに来たんだろ?
何で人を呼ぶような行動をするんだい?」

後ずさりしながら後ろ向きでそろりそろり、、と階段を上っていくトモコを、獲物を追い詰めていくようにゆっくり進んでいくタケル。


「だって・・・どうしてよ。みんな苗字と漢字があるのに。
どうしてタケルだけ「タケル」なの?

おかしいでしょ!

それで・・・どうしてそれをみんな気付いていないの?
そ、それが・・・」

頭がくらくらしてその場に倒れたいトモコ。


「決まってるじゃないか。俺が元々存在していない・・・からだよ」
なおも、、笑っている。


あ、あの白い女の子の話は?
トモコは足止めが出来る、と思ってネタを振った。

途端にいつものタケルの顔に戻る。

「・・・さぁ
何だろうね」

下を向いて考え込んでいる。

あ、隙が出来た、「ホッ・・・」どうしても安堵のため息が漏れるトモコ。


「う〜ん」

あのいつもの声で悩んでいる声。

しばらくそうしていて。

・・・

緊張感が取れたトモコが言った。


「あ、あの。その女の子ってタケルの存在を表す、、何か存在にまつわる何かを握っている子なんじゃ、、ないの?」

「・・・そんなはずはない」

タケルはそっと顔を上げた。


俺は20年前、この学校で自ら、、、

「ぐえっ?!」

すごい話に変な声が出る。


勿論中学生だった訳じゃない。

当時5歳だった。

「気の早いお袋がランドセル買って来て

・・・その直後だったんだ」


すごい話を箇条書きにすると

0.両親を失った
1.一番家から近いのがこの山の手中学だった(小学校だったら小学校に行ってた)
2.そんなホイホイ実行出来ないのに丁度良い環境(つまり道具だとかそういう)があった


それで、、姿のない姿(変な表現)で6歳からバレないように過ごしてきたのね。

「小学校→中学校」って

トモコ「元の苗字と、、漢字を名乗っても良かったのでは?汗 何故名乗れないの」


バレるだろ。いない存在なのにって。
万が一バレたらどうするんだよ


「出席簿とか・・・」

思い出した。タケルの苗字はない。

「(私委員長だから全員の名前覚えさせられたけど、「〜タケル」っていう人間はいない・・・)」


タケル・・・。


トモコは悲しくなった。

「ミナみたいないい人もいる。でももういい。
タケル、私を連れてっていいよ」

うつむきながら言った。


少し挙動不審になっている空気が感じられた。タケルが戸惑っているのだろう。


「私、、私、、あなたみたいな良い人がいるなら、世の中生きていけると思ったの。
政治家だって信じられる。悪い人間だって信じられる。人を陥れるような人だって気にしないでいられる・・・。
そんなあなたが、、本当に本当に『良い人』だと思ったあなたが、、

生きていないなんて!

じゃあ世の中良い人みんな存在してないってことじゃないの!

みんな幽霊みたいな!

そんな世の中!捨ててやるわ!私を連れてくなら連れてっ、、、」


なになになに!?


バタバタバタバタ


お嬢さんぽい雰囲気の英語の教師を先頭に、大勢の教師たちがやってきた。


「関さん?関さん?あれ?2年B組の関さんよね?

どうしたの?」

歴史教師「どしたんだい?誰かいたのここに
襲われたとか?」

数学教師「なんだよ、襲われた?誰に。誰にだ!!」

音楽教師「博菜先生落ち着いてください。ちょっと事情を・・・」

体育教師「関さん、関さん。関さんがどーかしたんかい?おーい大丈夫かこら」


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英語教師「も〜困ったわねぇ」

トモコを囲み、教師陣はため息をついている。


「本当に『タケル』って生徒は居たんです・・・
いつも一緒に、、いやいつもって訳じゃないけど、、

居たんです」


あれじゃないのか?

幼児が作る「イマジナリーフレンド(想像上のお友達)」

教師陣は「プッ」と一斉に失笑した。


担任の先生は数学教師だ。
(先程の『博菜先生』)

「(名簿を呆れて見ながら、、)『タケシ』『タケミチ』ならいるけどな

苗字なら『タケナカ』『タケモト』」

「タケ、が付くのはこ〜れくらいだな」パタンッと名簿を閉じた。



ま、、オカルトだもんね。こういう展開なのは分かってるわよ。

タフなトモコはすぐに回復した。


・・・


また来て、、連れてくなら連れて行きなさいよ。と思った。

「(あなたの秘密を知っているのは私ひとり。面倒なんでしょ。連れて行き・・・)」


涙がこぼれた。

いつの間にか誰もいなくなって真っ暗になっている教室。


自分の涙ではない。

「ん?」不思議でへ、、?と思うトモコ。

それは、タケルの涙だった。ことに気付いた。


良い人だって言ってくれて有難う。

そんな声が魂が、、胸に除夜の鐘のようにドドーンと響いた。


「(本当に悲しかったよ。あなたみたいな良い人が存在していないなんて。

神や仏が実はいませんでした、って言われるのと同じだった)」


トモコは精神性の高い人間だったがゆえに気付いたことであったが、、

気付かなかった人間たちだって同じ目に遭ったら同じことを思っていたであろう。


クラスメート、教師たち、近所の人たち、犬や猫も。

烏も(からすも?)

昆虫も(まじで!)

みんな、タケルを「良い人」と思っていた。


良い人と言っても、「何でも言うことを聞きそうな人」だとか

「都合の良い人」「何でも受け入れてくれそうな人」という意味ではない。

真性の「良い人」だ。


こーゆー人には「何でも甘えられそう」「何でも受けれてくれそう」と、付け込もうとする人間は返って寄ってこない。

「悪いことしたらバチが当たりそう・・・」と本能で思うからだ。
(っていうかどんだけなのさ)


トモコだけでなく、みんな誰もがタケルのことを大好きだった。

だから、タケルを独り占めするトモコに妬いている者すらいた。

だが、「関さんならしょうがないかー」とみんな諦めていた。


それは、、類友というものなのか。

精神性が高い人間だから、それに気付いて「この人ならしょうがない」と思ったのかもしれない。


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ひとつ疑問があるわ・・・

廊下を歩きながら、トモコが考え事をしていた。

「(あの霧の中の袖なし?の白服の女の子って何よ)」

いつまでもぐるぐる、、その謎が回っていた。


 

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