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じあい

初めは全く違ったふたり。

存在感皆無だった男性と、存在感が有り過ぎた女性。


次第に、ふたりともバランスが取れるようになっていった。


男の名前は「只野安曇(ただのあづみ)」

女の名前は「椛山洋子(かばやまようこ)」


安曇は、人が「猿」「猿人」「原人」「旧人」「普通の人間」に見えてしまう不思議な力を持っていた。


クラスメートで、偶然隣の席になった洋子は「真人間」つまり普通の人間であった・・・。


少数派は淘汰される。


極めて数の少ないものほど、遺伝子の力が弱く、子孫を遺す能力が(略)。


洋子により、真人間か真人間以上の存在であると分かった安曇。

ふたりは希少人種のため、片方が誰かと一緒になっても難しいのに、

このふたりが一緒になった場合は、、かなり子孫を遺せる確率は少ないだろう。

少ないとかそういうレベルではないかもしれない(気の毒になってきた)。



一緒にいて、何かが浄化されたか不思議な力が作用されたか・・・?

いつの間にか、安曇の不思議な力は消え、人間たちが普通に人間、として見ることが出来るようになった。


「これで、不安なく『有』が作れるわね。これからの人たちは」

満面の笑みで、その安曇の変化を喜び、世の中が新しく変わったからと喜ぶ洋子。

参照)←有、と無、について




大学を卒業し、就職してふたりは婚約した。


「名前はもう決めてるの!」

洋子は半紙に「慈愛」と書いていた。


「慈愛に満ちた子、っていう意味と、「自分を愛する」「自愛」に掛けたの」


「『慈愛』と『自愛』か」
感心する安曇。


子供なんてきっと気分次第でいくらでも出来るっ!多分ねっ

ニコッと笑うその姿は

あるふぁ、の頃の(過去参照)『私は太陽にだって負けない』と言っていた

あの頃の元気いっぱいの、、まぶしい姿そのものであった。



『こ、今度さ、一緒に食べない?』


『いいから』


『洋子』


『地球が宇宙に見放されて爆発しても。

私は生きてみせるわ』


『俺の手を離さないでくれ。お願いだ』


『あなたが好きなだけよ!』



自分の気持ちをちゃんと言えた。

相手の拒絶を恐れずに言う言葉。

たくさんの言葉。


きっと皆は今まで、「他人に対する言葉」だとか「他人に拒絶されない言葉」ばかりを選んできていた。

あるいは拒絶されることを恐れて何も言葉を言えなかった。


そうして、人はどんどん、進化していったのだ。
人の気持ちを優先する、という技術を付ける進化、をしたのだ。

同時に、自分の気持ちを言えなくなるという退化もしていった。


安曇の目からは 両方とも「退化した人種」に見えた。

そうでない人種が「真人間」に見えたのだ。

おそらく・・・


人に言えないこと、遠慮すること。

それが爆発して弱者には言い過ぎてしまって。


現代人は他人に言えない、言える人には言い過ぎる、が極端になっている。

これは「進化」であり「退化」でもあるのだろう。


口は災いの元、とも言う。

言えば良いものではない。


普段からの癖だとか習慣だとか

そこからの積み重ねなのだろう。


言霊(ことだま)という言葉がある。

言ったことが本当になる、というものだ。


「毎日元気でいなきゃね!」と言えば楽しい気分でいられるだろう。


自分のために。

自分のために生きよう。

言葉だって他人のために使うものじゃない。自分のために使うものだ。

歌だって他人に聞かせるものじゃない、自分が歌いたいから歌う。

自分のための、、

かけがえのない自分のための人生

他人のための人生ではない・・・


他人に捧げる人生であれど、それもまた、「自分のための人生」

自分が選んだ人生、、なのである。


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生まれるまえのあるふぁとべぇた。

生まれた後は能力あるオス同士、戦って戦友になって世を救うはずだった。


誰かのために生きる世の中は終わったのだ。

自分のために生きる世の中に変わった。


だからこそ、男同士で生まれるあるふぁとべぇたが 異性同士として生まれたのだ。

自分たちで幸せをつかむために。

自分たちの幸せを噛みしめるために。


人は退化しているかもしれない。

進化をやめてしまったかもしれない。

そうではないのだ。


自分の生きたいように生きる、本来の明るい太陽のような原始の頃の素晴らしい時代に回帰しているのだ。


自分のために生きる。

自愛。

自分を愛することで、慈愛が生まれ、他人にも自分にも優しい風を送ることが出来るようになるのである。


最優等種、あるふぁとべぇたは我々にそう語る。


(了)


 

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