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愛凛と幻

何処かの海岸。

そして夜。

文香「あいりーんちゃんは確かに居ましたけど、でも」

ざざ〜ん・・・


隣には高志がいる。


愛凛(あいりん)という謎の女性がいて。

義理の姪の名前は「文香(ふみか)」。

大学の同級生の名前が「高志(たかし)」。



あいりーん。

愛凛の愛称である。


彼女は不思議な女性で、その正体は謎に包まれている。


しばらく沈黙が続き。


僕はこれで。
と高志は帰ろうとした。

「待って下さい」と文香。


あいりーんちゃんのこと、、気にならないのですか?

文香は言う。

高志はくるっと背を向けて

「そりゃ、あいりーんさんのことを、、話そうと思ってここに来た訳だから、、
色々気になることがあったから。なんだけど。

でも。彼女はやはり僕には分からない。
彼女が何者なのか・・・」


逃げるんですか?

文香は言う。


あいりーんちゃん、何か。

このまま、、い、いなくなっちゃ


「それは分かってる」さえぎる高志。


ならどうして!

声を荒げる文香。


もう、駄目な気がするんだ。
高志は言う。


彼女は、遠い所に行ってしまった。・・・きっと。


波がざざん、と響き。

風が強く吹く。


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寝付けない文香。

むくり、と起き上がる。

窓の方を向いた。

月の光がとても強い。


ドビュッシーの「月の光」が流れてきそうな雰囲気に、ぼーっとする文香。


あいりーんちゃん・・・

心の中でつぶやく。

昔の。雪の並木道で「じゃね」と言ってくるっと背を向けて去って言った愛凛の姿を思い浮かべる。


いつの間にか遠い所まですぐに行ってしまっていて

海の中をすーっと泳いでいくお魚か何かを、、思い出す文香だった。

「・・・」


ざざん、と高志と語り合ったあの海岸。

何故か海に引き寄せられて高志とそこで待ち合わせをした。

何故なのだろう。

文香は疑問だった。

「(カフェとかで待ち合わせするよね。普通)」


・・・

あいりーんちゃんは 海の・・・

・・・


愛凛『清らかな人。聖母様みたいな人』

あいりーんちゃんは、女神様みたいな人だったよ
少しきつそうな顔してたけど・・・

とても美しい愛凛を思い浮かべ、文香は思った。


気付かないままに何故かベランダに出ている。

確かに存在はしていた。でも、人間じゃないのかも

・・・

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いつもは呑まないお酒。

とは言ってもそこまでアルコール度数が高いものではないが。

いつも夜はお風呂掃除をして(夜は何故かお風呂掃除がしたくなる性分らしい)
そしてのんびりとテレビを見て。音楽を少しばかり聴いてから寝る。

(お育ちが良いのだろうか)

お酒を少し呑み、
愛凛を思い出す高志。

・・・

『あたしね、アンタのこと、一番 好きだよ』


遠い日の。悲しい、思い出。

悲しい思い出。

ドビュッシーの「月の光」が流れてくるような空気が漂う。


この地球上にいる、、のかもしれない。

高志「(でも、もう二度と会えない。あの人には・・・)」


『高志、あなたって少し自惚れ屋さんよね』


・・・そうかもしれないけど。

でも、少しくらい。思いたいなんて。
ず、図々しいだろうけど・・・。


あの人が具体的にどういう存在だとか。
もういい。

確かに「居た」。


居たんだ。


涙がこみ上げてくる。

こんなことで泣いたりなんて絶対ない。
と、言うより泣く意味も分からない。


理屈じゃない。これだけ想ったらこれだけ返してくれるだろうとか

冷たい損得勘定でもない。


君が

高志「君がそういう想い方を、・・・教えてくれたんだ」


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もう二度と、、絶対に会えないと思った高志と文香。

愛凛に。

その想いが偶然共鳴して、冒頭のようにふたりで会ったのだった。

意味なんてないけど、、

意味なんてないけど


紙くずのように捨てられそうで。
世界から。

だから

文香「あいりーんちゃんに、人間にしてもらいたかったの」

高志「分かるよ」

常人が聞いたら「・・・?」と思うような台詞を言い合うふたりだった。


数年経ち、高志と文香は結婚した。

女の子が生まれ「愛凛」と名付けた。

勿論、「あいりーん」と呼んだ。


もう
ドビュッシーの「月の光」は夜中に流れることは無くなった。


 

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