現代ファンタジーのオンライン小説 - ものもの

愛凛

はっ

橘(たちばな)弁護士?

橘「あっ、はい」

キリッとメガネを整える。


ぼーっとしてた。

この季節になると思い出す。


寒くなる、、秋と冬の間くらいの季節。


「(あいりーんちゃん・・・)」

そんなタイプじゃないのに、愛凛のことを思い出すといつも涙腺がゆるむ。


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ズキキィーン

うっ

胸の痛みを抑える愛凛(あいりん)。


文香(ふみか)「・・・」

文香は後ろからでも愛凛の様子が分かる。

後ろ姿の愛凛を遠くから見て


初めは知らない振りをしようと思った。

「あいりーんちゃん?」


ハッとする愛凛。

くるっと振り返る。

「な、何?」


・・・静寂


いつもなら、何も言わないのに。


「理阿先生のこと?」

つい言ってしまう。



理阿なり子(りあなりこ)。

なり子と愛凛は幼馴染。



大昔、愛凛はなり子から忘れられない傷を負わされた。

散々仲良くするだけしておいて、最後の最後でみんなの笑い者にした。


その、なり子が

すごい事件の被害者となった。


・・・

あいりーんちゃん、、

文香「お金も失ったらしいわ。

五百万は・・・貯めてたみたい。

でも、、体中痛めてて、、その治療費で・・・」

文香「今は貯金ゼロだって・・・」


愛凛は「だから?」と言った。



その事件は、電車内で起こった。

体を触ってくる男性がいて、その男性を駅員室まで引きずり出したなり子。

男性はとても驚いていたが、特に抵抗することもなく行き先に向かった。

この時点で「気付くべきだった」のだ。
何かがおかしい、と。


程なくして、本当の「体を触った男性」が自らやってきた。
冤罪の男性の顔を電車で見て、「分かった」のだと言う。

どういう女性が声を上げ無そうとか、こういう女性は危険だからやめておこう、
彼らは「人間を見る能力に長けている」。
嗅覚とでも、、言うべきか。


「すんません!俺がそういうことをしたんです!その人は関係ないんです!
すいませんでした!!」

話を聞くうちに、本当にその、冤罪の人物が冤罪だと分かった。

が、今更引っ込みが付かなくなったのだろう。


「うるせえ!こいつがやったんだ!こいつがこいつがああ!」

なり子は冤罪の人物の襟首を掴んだ。


・・・


冤罪の人物はその筋の人間だった。


その女性、、つまり理阿なり子と本当に体を触った男性はきっちりけじめをつけさせられた。



愛凛「厭な世の中ね。
最悪なことしても、すごく悪い目に遭ったり、報いが来たら『何で可哀想って思ってあげないの?』とか言うのよね」

文香「理阿先生は、、私の女子高では普通に優しかったけど、、
そういう酷いことしてた、、のね」


文香は愛凛の血の繋がっていない姪で、なり子が教鞭を執る女子高の生徒であった。


愛凛はなり子の写真を見た。

「○○」

文香「え?」

「って顔。顔見りゃ分かる」


・・・

実は秘密にしているだけでなり子は、、確かに○○していた。


愛凛「顔見りゃ分かるのよ。○○に○されないで○ったんだろうなーとかね」

文香「・・・(そんな簡単に・・・?嘘だぁ・・・もうっ笑)」


愛凛は窓の方に歩いて行った。


あ、あの
文香「私の顔ってどんな風に書いてありますか!」

文香は立ち上がって聞いた。

愛凛は振り向かずに言った。


清らかな人。聖母様みたいな人。

普通はやましいことがあったら「この人に顔を見られたくない!」とか
隠そうとすんのよ

でも自分からそういう人って「な〜んにもやましいことない」んでしょ


ガラガラガラッ


外を見ていた愛凛だったが、ベランダに出て行った。

あっ


文香は追い掛けた。


あいりーんちゃん、私は、人を傷つける存在でありたくないんです。

ちゃんと私の顔を見て下さい。

と言う文香。


くるっ

たるそ〜に振る向く愛凛。


「・・・弁護士に向いてる顔」


とだけ言ってまたくるっと背を向けた。


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文香は司法試験を受け3回落ちた。
4回目にしてやっと受かった。


しかし、、文香はずっとずっと若々しく、美しかった。

若く美しい女弁護士として皆の注目の的になり、

彼女は何があっても例えば原告側なり被害者側なりに脅されるようなことがあっても

何故か、、どこからか不思議な力がいつも彼女を守り
平和な毎日を過ごせた。

五体満足で病気にもならず風邪もひかず貯金もちゃんと貯め・・・。


そんな時、愛凛の力を感じた。

愛凛に酷いことをする人間には天罰が当たる。

しかし逆の場合は必ず良い事があるのだ。


『・・・弁護士に向いてる顔』

何度も何度も何度も落ちても絶対に諦めるもんかと思った。

あいりーんちゃんがああいったんだからこれしかない!

運命なんて限界、切り裂いてやる!

こうして、
橘文香(たちばなふみか)という女性弁護士が生まれることになる。



愛凛はかなり前に行方不明になった。

元々両親がいない天涯孤独な愛凛。誰も心配しなかった。


文香は、
何か大きな厄災があると、「あいりーんちゃんがやってるんだろうな」とか
すごく良いことがあると「あいりーんちゃんが恋でもしてるんだろうか汗」とか思った。


不思議な義理の叔母。愛凛。

あの人は本当に「いた」のかな。


たまに、あの季節が巡るたびに思う文香。


 

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