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灰色の

小さな世界 > 第7章「交錯」
 



『たまたま良いと思った人形がおまえだった。
俐人。
魏 俐人。

たまたま、優秀だった。
優秀過ぎるほどに』


笛の音が聞こえてくる。

とても悲しい気持ちにさせる曲だ。

♪ ♪♪ ♪〜


『暘谷は、意図的に要素、を見て『優秀だ』と判断した。
鴻日も。

ただ、鴻日は優秀過ぎるがゆえに・・・
暘谷もだが。
男独特の「俺より上がいるのが許せない」を克服していて。

暘谷を認めてしまった』

俐人「暘谷を・・・」

・・・
あのっ
「済みません。あの、気になって」
妃羽が声を上げた。

髪をもたもたいじりながら落ち着き無く言う妃羽。
「前から、疑問だったんです。
どうしてそこまで、、鴻日さんて暘谷さんを買ってるのですか?」


【鴻日は、生まれつき、素晴らしい遺伝子が眠ってるんだろうな。
恐いよ。おまえの可能性が・・・】


突然、優しい男性の声が響いた。
主が聞かせているのだろう。


あまりに優しい・・・そんな声に俐人も妃羽もポーッとなってしまった。
不思議な現象なのに・・・

何かの映像。

水辺で数人が楽しく水遊びをしているようだ。

「・・・?誰だ?」
思わず声を上げる俐人。

『鴻日、尹 鴻日の実兄。だいぶ前に、亡くなっている。
最愛の兄。
鴻日の全てだった』

♪〜♪♪
♪ ♪♪♪


何もかも、優れていた訳ではないだろう。
普通か、普通より少し上。
それが鴻日。

兄は、ずっと鴻日を『優秀』だと過大評価して
こういうことばかり言っていた。

弟は、
「兄の期待に、いやそれは関係なくて。
そんな人間になりたい。なってみせる」

と深く思っていた。


当然のように。
当たり前のように。
普通に鴻日は上に、上に・・・留まる所を知らないほどにのぼって行った。

生まれつきこうなんだろう、と誰もが思うだろう。
誰もだ。

しかしそれは「努力によるもの」であった。


俐人「なるほど・・・」

『暘谷に兄を見ている。
兄ならば、道を譲れるのだろうな
・・・性格は似てないが、気質と容姿が「生き写し」なんだ』

気質。
優しく(暘谷の場合、『根』)、決して人を見捨てない。
素直に心から人を認めることが出来る。


性格は全然違い、
兄=すごくあからさまに優しい感じのお兄さん
暘谷=真面目でビシッ!としたお兄さん

だが・・・

(※「性格」と「気質」は違います・・・)



妃羽は手を口に当てた。
「(そんな秘密が・・・
鴻日さんが・・・)」


『まぁ。そのままいてよい。少し様子を見よう。
おまえの代わりなどいくらでもいる』
俐人に言う主。

・・・

俐人が言った。
「人形遊びがお好きなようで」

『楽しい』
フッと笑う主。


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ハッと妃羽が目を覚ますと、いつも通りの部屋だった。

横を見ても俐人はいない。
時計を見ると午前9時だった。


起き上がろうとして、「う"っ!」と声を上げる妃羽。
胸を押さえた。


主『私はおまえ。おまえは私
しっかり覚えろ』
そうして人差し指でズンッ!と妃羽の胸に刻印?を刻んだ主。

胸を開け、刻印の場所を見ると良く分からない花のような模様が刻まれていた。
花かどうかも分からない。

・・・
「(刺青だって勘違いされて問題が起きたら・・・)」
とても困る妃羽。



・・・

『おまえ、本当に俐人を愛してるか』


私は・・・


ずっと、灰色のままの妃羽。


 

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