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踏み出し

小さな世界 > 第7章「交錯」
 



妃羽は慣れない外国生活と、未生命からの攻撃、そういったものによるストレスで倒れてしまった。
最初はただの心労かと思われたが、日に日にどんどん弱っていく彼女を見て、
周囲の人間はとても心配した。

かと思えば、妙にハイテンションになって色々活動したり出掛けたり、
不安定な様子を見せていた。


当然、周囲は深刻に心配する。


ある時、正が妃羽の元に来た。

その時妃羽はネグリジェのまま、ミニ・ダイニングでスープを飲んでいた。

すっかりやせた妃羽は、食事はスープと少量のフランスパンしか食べられていない有様であった。


正「あなたは何か隠していませんか」

ビシッ
妃羽が固まった。

正は落ち着いて言う。
「護ってくれているであろう、ブレスレットがあるのに弱ってる・・・」

・・・
「差し出がましいようですが、俐人様のことが 関係しているのではと」

そうなのだ。
未生命に勝つためのブレスレットは、日に日に強くなっているはず。

・・・

・・・

あっ
あ、・・・
妃羽は下をクッと向いた。

正は、「(やはり何かあるな)」と思った。

近くにあったプーアル茶をトポポ.....と湯のみに注ぎ、
ふたつのうちひとつを、妃羽の側に置いた。

妃羽「・・・あ、あの」

・・・

「という訳なんです」

妃羽は話した。

正は妃羽にとって、『警戒心を抱かなくていい人間』で、
何でも話してしまうのだ。

正「(なるほど)」
正は少しも動揺せず、ことのあらましを聞いた。

・・・

「(何にせよ、未生命の凶悪化とかそっち方向じゃなくて良かった)」
穏やかに思う正。


両手をテーブルに置き、前後ろにカタカタッと揺らしてしまう妃羽。
「きっ嫌われたら、、や、暘谷さんには『は、ハッキリ言え』って。でも」

プーアル茶なのに砂糖を入れてかきまぜる正。
(あえてやってるっぽい)

ゴホッ

咳をする妃羽。

少しくらくらしているようだ。
(熱があるのだろう)


運動(散歩)
読書(ユウの正体調べ)
司書の勉強(再勉強)
庭造り(手伝い)


正「これらをやってもダメだったと」

下を向く妃羽。

・・・
正「ハッキリ言った方がいいのではないですかね」

ガタッと立ち上がる妃羽。

正は落ち着いて言った。
「嘘つきは泥棒の始まりです。
何となく悪いことが起こるような気がしないでもない」

やはり砂糖入りプーアル茶はちょっとな、という顔をする正。


正「え?」

ど、どうして、俐人様に関わるって分かったのですか?
聞く妃羽。

妙に俐人に対して敏感だったから、
なんてとても言えない正。


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その日の夜。

アポイントを取り、キチンとした格好で、ある扉の前に立つ妃羽。
右手にはパジャマが入れてあるバスケットを持っている。

ポーン、とインターホンを鳴らす。

優しい顔をした俐人が扉を開けた。

彼は毎日、妃羽私室にお見舞いに来ている。

『上海に一足先に帰りたい』、
『未生命関連の情報』、
・・・
ありとあらゆることを考えていた俐人。


「あの、つまりですね。あっれー」
イザという時に何も言えなくなる妃羽。

足元がぐらつき、ガクガクした。


何となく、分かっていた俐人。

その雰囲気を見て、面倒臭い状態になる妃羽・・・


 

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