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それは

小さな世界 > 第7章「交錯」
 



お風呂から上がり、パジャマに着替えて寝室と思われるところに行く妃羽。

ドアを開けると、
バッタリと倒れた、死にそうな顔をした暘谷がベッドに横たわっていた。

や、暘谷さん?
ペチペチペチッ!

叩いても揺さぶっても青い顔は変わらない。

「ど、どうしたんですか。お風呂でまさか血圧とかが?
脳の血管が切れたとか」

おろおろする妃羽。

救急車を、と立ち上がろうとした瞬間、

「いい・・・大丈夫・・・」
とやっと暘谷がしゃべった。


暘谷の話によると。

やっと好きな女性と一緒にいられる、
ふたりで眠れる

それが嬉しすぎて気絶してしまった、ということだ。
(アホ・・・)

お風呂に入り、パジャマを着て寝室に入った途端、くらくらして倒れてしまったらしい。

暘谷「煙草も、吸いに行けね・・・」

救急車の音が聞こえる。
呼ぶはずだった救急車。

別の人のところに行く救急車。

妃羽「(ともかく、暘谷さんが無事で良かった・・・)」


ムクリ、と暘谷が起き上がった。
が、またとすん、とベッドに倒れた。


「(たまたま好きになった女が私っていうだけで、こういう風に「好きな女性」っていう人が
出来たら、ここまでになっちゃうんだなぁ 暘谷さん)」


パチリ。と電気を消す妃羽。


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眠れず、リビングルームに行って雑誌でも読むかな・・・と起き上がった妃羽。

暘谷はスーと深く眠っている。

と、
暘谷の手が伸び、妃羽をぎゅーと抱き寄せた。

へ?と驚く妃羽だったが、様子を見ると無意識の行動らしい。

あの荒っぽい、喧嘩腰の暘谷とは思えない、とても柔らかい抱きしめ方である。

・・・
「(普段恐くて、でも本当は優しくて、で・・・優しい抱きしめ方、、
女嫌いなんて、、絶対損してるこの人)」

愛された人はたんまり幸せになれるだろうなと思う妃羽。

しかし、ドキドキ感は全然感じない。
魅力が無いからではなく、好きではないからである。


『一生のお願いです』


あの言葉通り、この人の願いは叶った。

「(まさか、この人もここまで願っているとは思わなかった。
良かった)」

突然あんなコト(一緒に寝たい)言ったのも何かの運命?なのかも
と思う妃羽。


妃羽「(普通考えたら有り得ないもん)」
意味不明すぎてずっと考えてしまう妃羽。


・・・


ガシッ


夢うつつの中、髪を左右つかまれて起きる妃羽。

ちゅ

前に引っ張られ、ぶつかった。


「あれ?」
声に出す妃羽。

慌てて離れようとするが、髪の毛をつかまれている。
寝ながら掴んだでいるらしい。

「か、髪・・・ちょっと・・・髪!」
手でわたわたと髪を戻そうとする彼女。

ぶちゅーっ

園児のようなキス。

ときめきの欠片もない。

数回のキスの後、やっと妃羽は離れられた。


・・・
女と縁が無い人生だったから、、
最初にやることと言ったら「園児のキス」なのね・・・


スーと静かに寝ている暘谷。


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珍しくその朝は、妃羽が朝食を作った。

暘谷「大丈夫なのかおまえが作って・・・」
いぶかしげな暘谷。

いつもは要領が悪くて料理の手順がまるでダメな妃羽が
何故かシャキッと出来ていた。

鶏肉粉絲湯、ての知ってますか?」
ニコニコして言う妃羽。


朝の光が眩しく、心地良い空間が広がっている。

「どうぞ」
テーブルに朝食を並べ、笑顔で言う妃羽。

黙々と食べる暘谷に、「キス、覚えてますか?」と心でそっと言う妃羽。


 

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