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あの人は

小さな世界 > 第5章「知られざる」
 




気付いたらそこはパーティ会場。

花宇「(あっという間のことだったな)」



・・・

かなり前のことのように思えるし、昨日のことにも思える。

暗い部屋で、そこだけ明るい冴子と冴子の椅子。
冴子はA層の住人で、清子を『花宇』としてA層住人に登録した存在だ。

立ち上がり、冴子は言った。

『D層で少し語っていたみたいだけど
バグ、って分かるかしら』

冴子は言った。

バグ。元々プログラミングされている動きと違った動きをする、という現象だ。
キャラクターたちが。

冴子は言った。
「どうしてそういう現象が起こったのか分からないけど
何かの運命だと思う」


何か危険を感じたら、諭弦さんを呼び出して下さい。


花宇は何かを感じてキョトンとした。

冴子は言った。
「バグには気を付けて」


・・・

ピーッピーッ
ピッピッピッ

ウィーン.....

ヴォーン.....


光のカプセルのような、カプセルではないがガラスがない光のカプセルのようなところに浮いた状態の花宇。


目が半開きの状態になったままふらふらする花宇。
そこへ冴子の声が響き渡った。

『設定通り、「日本人、中国育ち、名前:花宇(ふぁうー)」として登録します。
・・・そこへ、お兄様のお決めになった設定をまた、改めてインプットするわ』


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気付いたら、莫大(と言ったら大袈裟だが)な花宇としての「作られた記憶」が有り、
そこ(G層)では間違いなく『花宇』として生きている、ことになっていた。

今までのことは全部夢で、ここG層での人生が本当なのでは?と時折勘違いしそうになるくらいである。
(C層の清子の記憶はちゃんとある)


本人にとっては間違いなくたくさんの年月が経っているが、
実際は冴子が操作した数分だ。



気付くと、若干緊張しながら魏家の召し使い応募の面接会場にいる自分。
ふと鏡を見ると。
「(か、可愛い!・・・気がする
ちょっと待って。目立たない?)」
ととても驚いた。

『花宇』という人物設定で「容姿端麗」というのを勝手に夏彦に決められたため、
これは「設定」であって自分ではないのでそう思った。

(危ない人、ナルシストではない、という意味)

目立てば色々と面倒なことが起こる。
敵を少なく、味方を多く、世の中を得するように生きてゆくため「美しく」という設定にした、
はずなのにこれでは面倒なことになる。

バグが発生したのかもしれない。と思う花宇。

設定していた自分よりも明らかに美しく、その異常事態に
「主の勝手な『力』によるものに対して拒絶とか反抗する力が出て、バグが?出たのかも」
と思う彼女。

どこにも就職出来ず、そのような周りの私情がほぼ心配なさそうな名家・魏家に召し使い応募したという訳だ。

魏家の主人、そして跡取り息子「俐人」は美しい花宇に眉ひとつ動かさなかった。
上の人間は様々な人間を見ているし、どういう人間に対してであれ、『私情』を抱けば命取りになる。
そのためと思われる。


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魏家で月に1回開催されるレセプション・パーティ。

人数が足りなくなるため、予備の召し使いが数名補給される。

そこで見掛けた召し使い、

『侯 妃羽(ほう ふぇいゆー)』。


その時の花宇は自分が自分でないような錯覚に陥った。
驚いている自分を、別の自分が見ているような。

沙耶子が見ている、とかではない。

・・・

動いている彼女。

カチャカチャとグラスをお盆に持って行く彼女。

近くに行ってそっと顔を見て花宇は切なくなり、確信を持った。


「(おばあ、、ちゃん・・・)」

静止した後にじわーっと涙が出てぐしっと右手で拭いた。


少し経って元気が出て、完璧にバレないようにチラ見した。


花宇は思わず花のような笑顔になった。
「(似てる!何て似てるんだろう)」


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冒頭、だ。

月に1回会える妃羽さん。

たまに顔を出さない時もある。


花宇「・・・」

外見は瓜二つだが、中身が少し祖母と違うと感じた。

そしてそれが作られたもの、のように感じた。

・・・

いない時はとても寂しい。
それは祖母がいないから、ではない。

初めて会った時、巨大な力のような、引っ張られるような感覚を妃羽から感じた。

祖母に似ているからかと思ったが、「あの人が多分主人公だからなんだろう」と悟る花宇。


妃羽さんの愛に支障がきたされているのは何故・・・

祖母の「均一な姿勢」を思い出し、切なくなり。

幸せにしたい、と上からではあるが・・・深く思う花宇。


 

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