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扉、1

小さな世界 > 第3章「ミルフィーユ」
 



引き続き、落ち着いた色のソフト・ブラウンの鴻日の部屋。

鴻日は室内を歩き回りながら説明した。

人は、欠けたピースのようなものです。
欠けたところがずっとそのままになって、人生を終えることがほとんどだ。

くる、と背を向ける鴻日。


鴻日「あなたは、いつでも何処でもそのピースをくれる存在だ。
・・・人は、離れられなくなるでしょう」

ポン♪ ポロリロン♪
室内に、α波が出ると言われる心地良い音楽が出ていることにやっと気付く妃羽。

ポツポツと、窓の外では雨が降っているようであった。


窓の外を眺めながら鴻日が言った。

鴻日「暘谷さんは『月光』がお好きだった。
・・・あなたもピアノをお弾きに?」

は、はい。
妃羽が緊張しながら言う。

デスクに向かう鴻日。
「その、音楽がやっかいなんです。
・・・あなたの「音楽」は中毒性がある」


「・・・?」

ざわざわと、部屋の向こうで人々の走り回る音だとか会話の声だとかが聞こえる。

ポロロン♪ ポロ〜ン♪
癒しの音楽も敏感に聴こえる。


目をつぶって鴻日が言った。
「今まで、この世界に疑問を感じたことは?」

ギクッとする妃羽。

妃羽を見つめ、鴻日は黙った。


陥落し、妃羽は今までの『違和感』を全て鴻日に話した。

顔色ひとつ変えずに聞く鴻日。

インターホンを鳴らし、ワインとグラス2つを注文する鴻日。
『え、ええ(困惑の声)。かしこまりました』

鴻日「たまにはいいだろ たまにはね」
ガチャッと切った後に言う鴻日。


ワインが来るまで、と言いたいが話すよ。
と鴻日。

突然で悪いが 成り行きだしね。

姿勢良く椅子に座る鴻日。

あなたはこの世界の主人公で、音楽によって人を支配する。
・・・もちろん、それだけではないが

鴻日「俐人様も、暘谷さんもそれであなたの磁力に引き込まれてしまった」

妃羽「(な、何言ってるか分からないけど、嘘に思えない。
やだ。頭おかしいの?やっぱり)」

シュワリン♪ ティリリリン♪
癒しの音楽が別のものに変わる。


コンコンッ
鴻日「入れ」

失礼致します。
女性「お飲み物をお持ち致しました」

とても上品で美しい女性が入ってきた。

グラスにワインを注がせ、鴻日は退室させた。


ふたりはグラスを合わせる。

鴻日「乾杯」
チンッ


妃羽はワインどころではない。


俐人様はことの他あなたをお気に召したようで
少し


・・・

妃羽「?」

止まる鴻日の言葉・・・。

妃羽「あ、あの 冷静さを失ってしまった、とか?」
沈黙を破ろうとして言葉を発する妃羽。

鴻日「・・・まぁそんな所でしょう。
暘谷さんも僕も気付いていて、まだあなた方がご一緒の時に
離した方がいいんじゃないかと言っていました 別居とか」


きゅん・・・
少し切なくなる妃羽。

鴻日「ですから
俐人様がこんな状態になっている以上、暘谷さんへの対応はいかんともしがたく・・・」
険しい顔で指を軽くトントンと鳴らす鴻日。

ハッとする妃羽。

ガタッと立ち上がる。
「わ、私に何とか出来ることはありますかっ」


「ありますよ」
鴻日は答えた。

「あなたが、俐人様と、良くお話になることです」


 

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