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新たな?

小さな世界 > 第3章「ミルフィーユ」
 



あのな
「俺が行ったところで俐人様は余計ダメな方向に行っちまうだろう
逆効果だろう やれやれ」

暘谷は自分の車の方向に行ってしまった。

あーっ
嘘つき!
「一緒に行って、って昨日言ったら何も言わなかったくせに!」
妃羽は少し大きな声を上げた。

「暘谷の応対を何とかして欲しいと俐人に言う」と宣言した次の日の朝であった。

レタス「なるようにしかならないですよ〜」
ご主人なら何とかなるかも。

後ろではトマトとレタスが見送りに出ていた。

トマト「ご主人は多大な自信があるのでしょう」
レタス「代わりがいないですからね。ご主人の」

今まで、たくさんの俐人直属の秘書たちが俐人に就いたが、
ことごとく辞めていくか辞めさせられていったのである。

幸い、鴻日と麗海は極めて有能な秘書で、
一安心、ということになったのだが、

トマト「更に優秀なのがご主人、と」

少し上から目線な言い方になってしまったが、
事実を述べるトマト。


どう考えても秘書向きではなく、経営者向きの暘谷であったが
(そして本人もそれを望んでいたが)
俐人たっての願いがあり、迷った挙句魏家の第1秘書になったのだ。


レタス「それだけ俐人様を尊敬していたみたいです」

トマトも同意する。
「あのご主人がですからね 並大抵では」

車で遠くに行ってしまった暘谷を見送りながら、妃羽はどうしていいか分からず立ち尽くしていた。



男性「妃羽と名を言えば分かると申しております」

鴻日「・・・」

鴻日は背を向けて言った。
「通せ」


鴻日の部屋に、座るふたり。
(ブラウン)

妃羽「(ダメだやっぱり緊張する)」

鴻日は優しく言った。
「気を楽にしていていいですよ」

ふわりとした笑顔で言う鴻日。

しかし同時に恐怖も感じる妃羽。


沈黙が漂うが、全く動じない鴻日。

あ、
あの。
「暘谷さんのことで」
ぴたりと言葉を止める妃羽。

やはり何も言わない鴻日。

妃羽が言った。

「あの方が、私が迷惑を掛けていることで。俐人様と色々あるというのが
心苦しくて。その・・・」

何も表情の変わらない鴻日。

妃羽「(この人は暘谷さんを買っている(期待している)っていう人なのに
どうしてなの?)」

人と話している感じのしない妃羽。

下を向く彼女。

「下々の私が言うことではないのは百も承知です。
ですがあの方が色々あるというのは、その・・・」


フッと上品に笑う鴻日。
「あなたは暘谷さんの奥方ではない。
そのような権利はあるのでしょうか?」

えっ?!
パッと妃羽が勢い良く顔を上げる。

妃羽「だ、だって私は・・・」

鴻日は椅子をくるりと横に回して言った。

俐人様からあなたが離れた後、あなたは書類云々についての場に参加しなかった。
(by 5日目
俐人様はあなたを手放さなかったのですよ。
離縁をせず、

くるっと椅子を回して妃羽に向き直った。

鴻日「あなたを妻のままにした」


・・・

「暘谷さんは、『あなたを預かる形になった』という訳です」


『し、白いケーキは
その、白家(ばい。暘谷の家)に、君が入るから』
(by 台風初日

少し前の暘谷のサプライズを話す妃羽。


鴻日「だますためでしょう。
あなたのためを思い、あなたを大切にしようと思ったのでしょう」


「・・・我々も、だまされる振りをしていた。
暘谷さんもそのつもりで演技していた」


「わ、私には何だか・・・」
妃羽は小さい声で言った。


下を向いて妃羽が言う。
「でも・・・私は暘谷さんに恩義があります。
暘谷さんに不都合なことがあれば、・・・わ、私が出来たらですが
何でもしたいと、、思っています」

鴻日「・・・」
鴻日はポケットに手を突っ込んだ。

ぱくぱく、と口を動かして覚悟を決めて妃羽が言った。
「り、俐人様と話せと言うのでしたら、精一杯話し合いたいと思います。
逃げません」


片手だけ手をポケットから出して鴻日がうーむ、というポーズをした。


あまりの沈黙に思わず顔を上げる妃羽。

おっと失敬。
鴻日は顔を下に向けた。

え?
「(俺にもバグ?)」
鴻日は手で口を押さえた。



妃羽は鴻日の青くなっていく顔を見守るしかなかった。


 

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