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『月光』

小さな世界 > 第3章「ミルフィーユ」
 



ベートーベン:ピアノソナタ第14番「月光」


妃羽「(何も感じない。冷たい感情)」

ピアノ室で夜にピアノを弾いている暘谷を、ドアの辺りから見る妃羽。

・・・

「おいっ」

テクテクと自分の部屋に戻ろうとした妃羽を暘谷が呼び止めた。

「何隠れてんだ(汗)」

振り向かずに妃羽は言った。
「えーっと・・・」


<すぐに>

妃羽「キャー!やだってー!」

妃羽を片手で捕まえ、ピアノの元に連れて行った。


ピアノの前に座らせて暘谷は言った。
「弾けば?
いっつも聴いてるみたいだし」

ギクッ
「み、見てたんですか・・・」

ポーンッ♪


よしっ

指鳴らしの後に弾く妃羽。

♪♪〜 ♪


♪ ♪

暘谷「迷いが出てるな」

手を止める妃羽。
「あの、、この曲って『つかめない』んです
乾いてるっていうか
感情がない?っていうか」

ポロロン.....


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妃羽のベッド。
ユウが隣で丸まり、妃羽は落ち着かないで横になっていた。

ピアノの弾けない暘谷が練習して弾けるようになった「月光」。

『俺はこの曲以外拒否する』と言わんばかりに当然のように何年も練習している曲・・・だ。
ライフワークか?いやそうだろう、と言うくらい。
(あくまでピアノ)

ずっと、一生(言い過ぎかも)忘れられないくらいの、
印象に残る、、弾き方。

感情が無いのに、妙にワクワクさせられてドキドキさせられて、
こっちばかり熱く(感情が)なってしまう、、

相手は間違いなく「感情が有るはず」で、こっちも感情がある。

のに、絶対的に「感情が無い」。


妃羽「(私も、、ああいうの、、弾けるようになりたい
ああいう弾き方・・・)」


そして、暘谷の「月光」を聴いていると、一気に様々な人間たちを思い出すのだ。
曲の中に人間たちがみんな隠れていて、

鮮やかにみなの顔が思い浮かぶ。


ティッシュを取って鼻をかむ妃羽。

「(また作曲活動しよ、、庭園のお手入れも)」

『あっ、こっちっすよ。ええ、ええ。
そうですねー。大丈夫ですよ。はい』

ほのぼのとした雰囲気の庭師の顔が思い浮かぶ。

妃羽「(寝なきゃ)」


ガバッ

妃羽「(寝付けない・・・)」

・・・


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ポーン

ポポン.....

妃羽「(完全防音だから大丈夫よね
そういう問題じゃないけど・・・)」

ごくっ

ポロロポロ.....

「何やってんだ」

ギクッ!


楽譜の本たちをトントンッと揃える暘谷。

「まったく。電気が付いてるから何かと思えば。
真夜中にピアノ・・・」
ふぅ、とため息をつく。

あ、
あ、その。これは
妃羽は慌てた。

妃羽「どうしても、暘谷さんの『月光』に近付きたくて。
私頑張りたくて。
寝付けなくて弾いていたのは済みません・・・(汗)」

ポンッと「森林」の楽譜を軽く妃羽の頭に叩きつけ、

暘谷「俺もまぁ、ピアノ弾きに来たし。寝付けなくて。
少しやるか」
と暘谷。

パアァッと明るい顔になる妃羽。


弾いて下さい!月光・・・

・・・
暘谷「(まぁ、喜んでくれるのは嬉しいかな)」
少しまんざらでもない暘谷。


冷たくて、でも聴く人にとっては温かい音楽が部屋いっぱいに広がった。


 

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