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泳ぐ前

小さな世界 > 第3章「ミルフィーユ」
 



うっぐ うっぐ えっ
清子が本を読んで感動して泣いていた。

『神々の黄昏(ラグナロク)』

「愛花(愛羽)さんと許婚さん、、すっごく幸せそう〜」

きゅっと本と抱きしめ、「こんな素敵な本、見たことない〜」と言った。


「今夜か?出立」
問う兄。

うん
涙が一瞬で乾き、ニコッと兄に振り向く妹。


大!の仲良し兄妹、「夏彦」と「清子」。


ふたりは相性が良く、いつも話をしているか何処かに冒険?しに行ってるか

何となくべっとり傍にいるか。

の、どれかであった。

何となくイヤなことがあった時も、一緒にいれば不思議と消えてまったりと過ごせる。

えっと
「大衾長枕(たいきんちょうちん)、棣鄂の情(ていがくのじょう)・・・」
ある日清子が言い、

「ソレ漢字書けるかー?(汗)」
と夏彦。

共に、『兄弟仲が非常に良い』という意味の四字熟語である。



清子「お兄ちゃん、寂しがらないでね?」

夏彦は言う。
「心配だよ・・・。おまえホント大丈夫か」


夏休みの廃寺探検。

あやしい作業服を着ながら古書発掘。

そこで出てきた不思議な書物。


比較的夏彦にとっては簡単な謎解きの末に解読した文章。

世界観についての聞いたこともない説明。
何故か引き込まれてゆく兄。


そして「持っていかれ」る妹。


兄は妹を信じているので、まぁ大丈夫か・・・とも思っていた。

「(・・・頭がおかしくなった・・・・・・訳じゃ・・・ない、、よな・・・)」
ファンタジー小説やSF小説は全然読んでない。
ドラマも映画もそういった類のものは見ていない。


「(目の前の浴衣の清子は実は別人で、俺の頭の中の清子で、
俺の頭の中が・・・)」


ぐずっ
「こ、このっ愛花さんと許婚さんて素敵すぎる・・・うっ」

少し遠くの縁側で清子が『神々の黄昏』を読んで感涙していた。

うぐっ うっ

夏彦「泣いてるとこ申し訳ないけど、緊張感ないんですかー?」
声を掛ける。

え?
振り向く妹。


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1、A層〜G層はそれぞれ時間が一致しておらず、混沌としている。
ここでの1日がどこかで10秒で、どこかの1日がここでの10秒だったり。

少女『だから、心配しなくても、いいわ。
帰ってきた時、ここではせいぜい1日。多くて3日しか経っていないわ』

夏彦『糸、としての役目を終える・・・までか』


2、設定の通りの『名前』と『人物設定』を清子に授ける。
7層を旅している間は「花宇」を名乗って欲しい。

少女『素敵な子ね。でも私、清子さんの方が好きよ』
(↑設定を読んでいる)

夏彦『えっ』ギクッ


3、他の細かい設定はこちらが決める。



風鈴が鳴っている。
今、清子は傍にいるが、長くて1週間・・・離れることに。

周囲の人間たちは「演劇部の部活の合宿が1週間ある」と催眠を掛けられることになり、
実際に清子が帰って来た際は、出発時の10分間・・・に戻されることになった。

・・・


彼女にとってはどのくらい
俺と離れていることになるんだろう。
夏彦は思う。

「(おまえの読んでいる小説の中の「愛花」っていう女。
大切なやつと離れている時は無口で心を閉ざしたようになってて。
・・・大切なやつが傍にいたら元気になってたよな)」


え?

え"っ?
ぐわしっ!

清子の声が上がった。

夏彦が思いっきり清子を抱きしめた。


ほんの数秒だろうが、ふたりにとっては数分だったであろう。
(ちょっと待った。あやしくない!)


夏彦「理不尽だ・・・。怖くないのか清子・・・」

目を点にする清子。

清子「ふっはぁー!!お兄ちゃんやっぱ寂しいのぉ?」


数分後、プロレス技を掛けられて目を回した清子が床の間室に横たわっていた。


目を回しながら『神々の黄昏』を読む清子。

・・・
「愛花さんの世界・・・あるのかなぁ・・・」


チリン.....、と風鈴の音が大きくなった。


 

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