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虚しい傷

小さな世界 > 第1章「妃羽」
 



「(今はここにいるけど、あそこ・・・俐人様のお部屋に行って、言い訳しないと。
楽しいひとときを有難う御座いますって)」

ハッ

目を覚ます妃羽。
目だけぐるりと部屋を見渡す。

嗚呼、俐人様とのお部屋だ。

ガバッ
妃羽は身を起こした。

横にドアがあり、明かりが漏れている。

少し震えながら昨日のことを思い出す。
「(確か・・・)」

キィ.....

冷笑を浮かべた俐人がこちらにやって来た。


訳の分からない妃羽に、
「済まない。訳の分からない思いをさせてしまって。
昨日から一緒・・・昨夜から一緒。
今日もね」

という俐人に、

サッと口を押えて、
「仕事は・・・仕事は?あ、確か馮(ふぉん)主任に、、連絡したんだった」
と思い出す彼女。

パッと掛け布団を取り、「馮主任に連絡しないと。ここに居たら」と
急いで携帯電話を探そうとする妃羽。

携帯電話を見つけ、電話を掛けようとするが、夜中なのだとハッと気付く妃羽。
バッグに持ち歩いていた充電器が携帯電話に刺さっていて、驚く。

そのまま、後ろを振り向くのが怖くて、後ろの人物に妃羽は言った。

「何故、私なのですか」

『君が好き』
そんなコトを言っていた気がする。

今は何時だろうと思う。
夕方から夜に掛けての時間だろう。



彼女はひとつひとつ今日の出来事を思い出す。

モーニングサービスの朝食を食べられないまま、仕方なく俐人が取り寄せた果物を食べ、
そしてひたすら俐人を見ないようにしていた。

うろちょろしていて、バスルームに入ってお湯を張り、だらんとして。


めまいがするほど、長い時間が経った。

彼、俐人かどうか分からない人物は自分を必要としているようだ。
常にひっついて離れようとしない。

『何故、私なのですか』
再度、強く言う彼女。

「私はあなたが好きです。でも、だからって・・・」
こちらの気持ちも都合も考えずに『どうにでもなる』のような扱い、
莫迦にしてる、と心の中で言う妃羽。

しかし、少しずつじわーっと涙がたまっていった。
もしこの部屋を出たら、もう二度と魏 俐人(うぇい りーれん)に会えない。
会えない・・・

突然の悲しみにグッ、とこらえつつも「じわ〜っ」と目尻が熱くなり
うっうっ、と鬱陶しくなる妃羽。

意味もなくバサバサッと服を整えて整えて・・・
くるっ、と振り向いた。

目をきちんと見据えて、「莫迦にしているんだとしても、、それでも私はあなたのこと好きですから!」
と必死に言う彼女。

・・・
彼女は、こんなにひっついてくれている俐人が例え一時の戯れに拠るものであっても
好き(とは違うかもしれないが)になってくれているのなら
それはそれでいいかも―・・・と優柔不断に思った。

俐人はムッとして「君を同情でどうこうしているのではない!」と向こう側の部屋に行った。

すぐに戻り、「君がそんなに疑い深いとはね。大人のくせに」とツンとして嫌味を言って再度回れ右をして遠くの方に行った。


妃羽は疑問だった。
子供=何でも信じる。疑わない
大人=疑う。何でも信じるリスクを背負わない

目を点にしながら、「(疑うのが大人―・・・なのでは?)」と思った。


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更に、次の日の朝。

妃羽は鉛のような体で目が覚めた。
緊張のしっ放しだからと思われる。

離れたくないと思いながらも、
雲の上の人の俐人と共に過ごしている。

職場には何故か連絡が全て行っていて、「(だ、大丈夫なんだろうな)」と何とか安心する妃羽。

お腹も痛いし、頭も痛い。
肩も痛い。

すごく、心臓に悪い。
魏 俐人と一緒にいるのは。


痛みは色んなところを駆け巡っていた。
バスタブにお湯を張り、それで何度も痛みを和らげようとする妃羽。
この部屋から出たら、お馴染みのいつもの風景が待っているのだろう。

あ、あれ?
顔を両手で軽く押さえて泣く妃羽。



数日後―・・・

チャリッ

俐人「これがうちの ― 屋敷の鍵だ。
私にまた会いたいだろう。
家の者には言っておくから」

追い掛けようとする妃羽だったが、そのまま去って行く俐人。



『何故惹かれたのか。惹かれるべくして惹かれたのだろう』
『何故君なのか。こっちが聞きたいよ』

妃羽が勇気を出して聞いた、「何故私なのですか?」に対する答えである。

渡された鍵をギュッと握り締める妃羽。
いたずらだろうとも、その気持ちだけでも嬉しい、と思った。


 

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