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ハイ・ソサイエティ

小さな世界 > 第1章「妃羽」
 



某大飯店。

いわゆる、ハイ・ソサイエティ(上流階級)が行くような豪華なホテルである。

部屋に入るとプールと蓮の花の池が見えた。

妃羽「あ、あの何かあったのですか?
私に不行き届きでも」

何か怒らせてしまったのではないか?
妃羽は慌てた。

大きな組織の上の人間である。
というより、上の上の人間である。

顔の、両耳あたりをそっと押さえ、
「(号泣してしまったけど、それが失礼だったとか)」

目の前にいる人物が全然見えない。
後ろ姿かもしれないし、少し見えない場所に移動しているのかもしれない。

ちゃぷっ
プールの水の音が少し風にあおられて鳴った。


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話し掛けるのも失礼だと思う妃羽。

逆切れしたい思いをぶちまけたいという欲求が生まれ、
「話し掛けるのは失礼」という気持ちに勝った。

スッスッスッ

震えながらもかの人がいるであろう場所に向かう妃羽。

よほど緊張しているのだろう。
窓ガラスにどしっ、とぶつかったりした。

ピシャッ
プールの音が鳴り響く中、
そっと立ち止まりぼーっと何も考えずにプールと、蓮の花を見る彼女。

部屋ではBGMが流れている。

窓ガラスに頭をぐりぐりしながら、「(えーと)」と考える妃羽。


1、号泣したのは謝ります
2、あなたのことが密かに好きで、つい
3、でもとてもはしたない行為でした

4、お叱りはいくらでも受けますが、職をどうこうする事はご容赦下さい


その時、後ろから声が掛かった。
「侯 妃羽(こう ふぇいゆー)」

サッ、後ろを振り向く妃羽。

う、後ろにいたのか、と緊張でバクバクする彼女。

「な、名前をどうして・・・」
名前すら調べられているくらい、マークされているの?
わ、私そんな変なことしたっけ。

過去、何か後ろ暗いことしたとか。
何もないよ。

私の亡くなった両親が何かしたとか。

・・・
・・・高速回転で考える妃羽。

ズイッ、と妃羽に近付く俐人。
反射的に後ろに下がる妃羽。

ぎゅうぅぅ、と彼は抱きしめた後
「私は君が好きだった。君も私のことが好きなようであるから・・・」
と言ってそのままずっと静止した。

ふと

召し使い ― 臨時のだが、で見掛けるたびに
ほんの少しだが、不思議な感じがするのを感じた妃羽。

これがお偉いさんオーラなんだろう、と感動していた彼女。

あれは私を見ていたオーラだったのか?
と薄く思いながら彼女は意識を薄れさせていった。


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気が付くと、備え付けの寝巻きのようなものを着ている妃羽。
ここって何処?ここは・・・ここは?

場所が分からずに頭を軽く左右に振り、
「あっ」と小さく声を上げて横にいる俐人に目を向ける彼女。

やはりきっちり寝巻きを着て寝ている。

そっと、隣の俐人を起こさないように音に気を配りながら
ベッドを降りる彼女。

「ん・・・何処行くの」
という俐人の声。

グオーッ、というエア・コンディショナーの方がよほどうるさいのに
ギシッ、と起き上がる彼。

部屋は暗いのに、妃羽にとってはだいぶ慣れてしまった。

「水を飲もうと・・・」
妃羽が背を向けて頭だけ彼を見て言う。


10分後―・・・

コポポポ・・・

部屋の備え付けのお茶を作る機械でお茶を作っているふたりがいた。

「(えーと)」
妃羽はおさらいをした。

昨日、みっともないほど号泣した。
その私の手を取り、彼は―・・・

ちらっ、と俐人を見る妃羽。
ティーカップを両手で(熱くないように)持ちながら

「(こんなことするなんて・・・)」
と不思議に思った。

誰にもしているんだろうか―・・・
妃羽は意外と冷静に思った。

俐人がカーテンをシャーッ、と開ける頃、
妃羽は「いずれにせよ、いい夢が見られたかも」と思った。

朝陽があまりに眩しくすがすがしいので、
浄化されたような気分になる妃羽。

窓のところに行き、外をホーッとしながら見た。

カッチャンカッチャン、後ろでいつのまにかモーニングサービスのカートが出てきている。
ドアの音に全く気付かず、「あれっ?」と思い「(私の姿を見られたら都合の悪いことがっ。
噂になっちゃう)」
と青くなる妃羽。

召し使い達は気にも留めない様子だった。


職場は休み扱い、俐人ともう一日過ごすことになった。

お姫様のような時間。
妃羽は少し感覚が麻痺していた。


 

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